■運搬コストは89円→2円まで下げられる!?
しかし、昔は夢だと思われた天然ガスを液化して運ぶということが当たり前のように世界中で行われている。これと同じようなことが水素でも起こるのか。
川崎重工業 橋本康彦社長
天然ガスも当初は、こんなに高いエネルギーが使えるのかと皆さんはすごく疑問に思っていましたが、「大量に一気に運ぶ運搬技術」そして「液化して運ぶ技術」が問題を解決しました。日本で初めて我々が液化天然ガスを運搬船で運ぶことで、そういったソリューションを提供してきたという自負がある。

水素は1N㎥(ノルマル立方メートル)あたり170円ぐらいコストがかかっています。そのうちの89円が運搬コストなのです。この運搬コストが商用化実証の大きな船になると、最終的には2円台まで下がるので、エネルギーコストの中に占める運搬コストは極めて小さくなります。
■熱湯を1か月、放置しても温度はほぼ変わらず 驚きの「断熱技術」

世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」は水素75トン、燃料電池車で約1万5000台分を運ぶことができます。タンクには、マイナス253度まで冷却することで液化し、体積が800分の1まで縮小された液化水素が積載される。
川崎重工では2030年の商用化に向け、タンクの大きさが現在の約128倍で16万㎥、約1万トンの水素を運ぶことができる大型の液化水素運搬船の開発を進めている。一度に大量の水素を運ぶことができれば、その分、価格を抑えられるという。また動力に水素を使うことで、運航中も二酸化炭素を出さないクリーンな水素の輸送が可能になる。
ただ、マイナス253度の液化水素を船に積んで運ぶことに技術的なハードルはなかったのだろうか。

川崎重工業 橋本康彦社長
種子島のロケットは液化水素を燃料として飛んでいるのですが、液化水素の燃料供給系は1987年以来川崎重工がそのシステムを提供しておりまして、液化水素を提供するというシステム、設備に関しては実績があるのです。我々の技術のコアは断熱技術にあります。「すいそ ふろんてぃあ」がどのぐらいの断熱技術を実現したかと言いますと、タンクに100度のお湯を入れて1か月間ほったらかしにしても99度、たった1度しか下がらない。そのぐらい高い断熱性能を誇っている。
■水素事業は2050年に約2兆円規模
川崎重工業として水素事業は将来どれくらいの比重を占めるようになると見ているのか。

川崎重工業 橋本康彦社長
2050年に約2兆円の規模、いま会社全体で売り上げが約1兆5000億ですから、いまの我々の売り上げ以上に水素だけで大きくなると。一番コアになっていくと考えています。
(BS-TBS『Bizスクエア』 7月23日放送より)