いま二酸化炭素を排出しない次世代エネルギーとして注目されているのが水素だ。水素は水素自動車や発電の燃料などへの利用が期待されており、日本政府は現在約200万トンの利用量を、2050年には10倍の約2000万トンに増やす目標を掲げている。水素を作る、運ぶ、貯める、使うなどサプライチェーン全体に強みを持つ川崎重工業の橋本康彦社長に水素ビジネスの未来と課題を聞いた。
■水素は確実に将来人類にとって大事なエネルギーになる

今年2月、オーストラリアで製造された水素が神戸に到着した 。この時、使われた船は川崎重工業が手がけた世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」だ。早くから水素に関するさまざまな実験を行っている川崎重工業の橋本社長は、脱炭素社会の主役は水素だと話す。
川崎重工業 橋本康彦社長
水素は世界中ありとあらゆるところから持ってくることができ、ありとあらゆるエネルギーから作ることができます。さらにクリーンエネルギーでありながら貯めることができるのです。これは非常に大きなことで、世界中のエネルギーの安全保障の問題あるいは安心して使えるという観点からも、水素は確実に将来人類にとって大事なエネルギーになると確信しています。
そもそも水素は輸入せざるを得ないのか。
川崎重工業 橋本康彦社長
水素は電気分解で作ることもできます。ただ、いまの規模で作ると非常にコストが高いのです。作れるということと皆さんが手に入れやすい値段で買えるということは別の問題です。最終的には国内の水素が十分価格的に耐えられる形にしていくためにも、はじめは海外から安く買える水素を大量に供給して、まず水素をみなさんに使っていただく環境を作るのが極めて大事だと考えています。
そもそも水素の製造にはおもに2つの方法がある。化石燃料をガス化して水素を取り出す方法と、再生可能エネルギーを使い、水を電気分解して水素を取り出す方法だ。ただ化石燃料の場合は発生した二酸化炭素の回収と貯留、また再生可能エネルギーではコストが課題となっている。いずれにしてもいかにクリーンで、いかに安く水素を作るかが問題となっている。