保守系シンクタンクが進める「プロジェクト2025」 政権移行後の人事構想とは

ワシントンにある保守系シンクタンクはトランプ氏の政策を具体化し、人員配置の面でも準備を始めているという。中でも目立つのがヘリテージ財団と米国第一政策研究所(AFPI)の2つのシンクタンクだ。

渡辺調査部長
「 ヘリテージ財団は約半世紀前に設立された老舗のシンクタンクで、レーガン政権以降、共和党政権の保守政策を支えてきました。連邦議会議事堂の近所にあって、議員に政策メモなどを差し入れする実務に近いシンクタンクです。 一方、AFPIはトランプ氏と親しい関係にある人物や、トランプ政権の元高官が多数所属していて、まだ2021年に設立されたばかりの新興シンクタンクです。ラリー・クドロー元国家経済会議委員長、ロバート・ライトハイザー元USTR代表らが所属しています。今のヘリテージ財団は昔と違って、トランプ氏寄りのポピュリスト政策の影響が大きくなっていて、ヘリテージ財団の方がトランプ氏の政策に近いとの見方が一般的です。」

ヘリテージ財団は「プロジェクト2025」と称する政権移行事業を2022年に立ち上げている。その内訳を見ると、(1)政策アジェンダ、(2)人事、(3)研修、そして(4)大統領当選から180日間のプレーブック。これは政権移行から政権発足直後まで何を実施できるかなどをまとめたものだ。
そして、「プロジェクト2025」の上級顧問を務める、ジョン・マッケンティー氏の存在に注目だと渡辺調査部長は説明する。

渡辺調査部長
「 マッケンティー氏はトランプ政権発足時、トランプ氏のカバン持ちで個人秘書をしていました。トランプ政権末期に、まだ当時20代後半と若かったマッケンティーは要職の大統領人事局長に就きます。そこでは政権幹部を面接に呼び出し、トランプ氏に忠実でない政府高官を追放するなど、政権内で注目される存在となりました。トランプ氏が大統領に返り咲いたら重要ポストに就く可能性が高いマッケンティー氏が関わっている、『プロジェクト2025』の動向は注視すべきと思っています。」

渡辺調査部長の解説

そして、「プロジェクト2025」の人事の柱として、トランプ氏に忠実な人物に絞った人材データベース=「保守派リンクトイン」を準備していることが分かった。

「保守派リンクトイン」は2023年春から人材募集を開始していて、すでに7000人以上が登録をしているという。目標は、11月の大統領選までに4万人の登録者を確保すること。

渡辺調査部長
「具体的なプロセスですが、トランプ政権勤務を望む国民はまず、ヘリテージ財団の「プロジェクト2025」のウェブサイト上で申し込みをします。その後アンケートに回答し、保守派のイデオロギーやバックグラウンドなどを確認。 通過後、オンライン研修(レーガン、ブッシュ、トランプ政権経験者による講義)→テスト合格→トランプ政権の政府高官候補になるという流れだということです。」

人事面でも着々と準備が進められる「トランプ2.0」。もし、トランプ氏が大統領に返り咲いた場合、忠誠心の強い幹部らによる政権運営は世界の国々にどのような影響をもたらすのだろうか。