■「一流大学、超一流企業、ルックス偏差値60」 SNSで横行する無秩序な精子取引

見知らぬ人同士が、ネットの世界でつながり行われる遺伝子の取引。SNS上には「精子提供」を申し出るアカウントが無数に存在している。


「35人誕生、A型二重、179センチ」
「一流大学、超一流企業、ルックス偏差値60」
学歴や容姿、年収などをことさらに強調する書き込みが多い。さらに、提供希望者を「クライアント」と呼ぶもの。“有償”で提供をおこなうもの。まるで、精子が「商品」のように取引されている。
これらの行為は違法ではないというが、あまりにも無秩序な状態に見える。私たちは、複数のアカウントにメッセージを送り、提供者に接触を試みた。電話での取材に応じた、東北在住の男性はーー

提供者の男性
「もともと、献血の延長線上みたいな感じで。精子提供に至ったのは2名」
記者
「新しい命が生まれてくる。その子供が自分のところに来る可能性もある」
提供者の男性
「いやー絶対面白いだろうなと思って。物は自分で歩きませんけど、人は自分で歩くじゃないですか・・・」
■見たことも会ったこともない娘が「可愛くて仕方ない」
さらに取材を続けると、匿名を条件に「直接取材に応じる」という精子提供者の男性も現れた。男性は、取材の待ち合わせ場所に自らの職場を指定した。

羽田空港で働く、Tさん(30代)。1年半ほど前から専用のマッチングサイトを通じて、精子を無償提供しているという。この日は、提供希望者のもとに車で向かうという。
記者
「今まで、何人くらいに精子提供をしてきた?」
Tさん
「今までだと4組の方ですね。合わせて13回提供してきました」
記者
「実際にそれが妊娠や出産に繋がったケースというのは?」
Tさん
「1件だけです。2021年の4月に提供した方で、2021年の12月に無事に赤ちゃんが誕生しました」

記者
「赤ちゃんの写真は見たのか」
Tさん
「いや、見てないです。名前だけ教えていただきました。娘が可愛くて仕方がないですね、私としては。まあ見たこともないですけど」
記者
「見たこともない、会ったこともない子どもをかわいいと思えるのか」
Tさん
「今でも今頃何しているんだろうと気になってしまって。親馬鹿っていうか、自分の子どもではないんですけど。約束上、こちらからは連絡することはできないので・・・もし将来的に娘が会いたいと言えば対応はしますけど」
記者
「書面を交わして契約をしているのか?」
Tさん
「いえ、書面は交わしていないですね。すべて口約束ですけど」

















