■「1000人子どもがいたらやめる」 50人以上の子どもを持つ“父親” 

法整備が進まないまま「危うい実態」が一人歩きしている精子提供。取材を進めていく中で100人以上に精子を提供してきたという男性に話を聞くことができた。



記者
「妊娠・出産に繋がったケースは?」
西園寺優氏(仮名)
「ちょっと数字がブレるんですけど、だいたい55から75くらいの間ですね。確実に全員が連絡をくれる訳ではないので。実感はあまりないですよ。皆、だっこした訳じゃないので。まあいるんだなという感じ」
記者
「正確な数字を把握できないことへの怖さはないか?」
西園寺優氏(仮名)
「特にネガティブにも思っていないし、ポジティブにも思っていないし普通ですね、そこに関しては。」
記者
「感覚が麻痺していっているような感じはないですか?」
西園寺優氏(仮名)
「麻痺というか慣れていった感じはしますね」



記者
「正規の医療機関の精子提供は、1人の精子から10人までと決められている。近親婚を避けるという狙いがあると思うんですが」
西園寺優氏(仮名)
「私個人は1つの都道府県で10人までという…個人的に決めた制限なんですけど、考えていて。仮に1000人子どもがいたらやめると思うんですよ。“自分的なライン”にまだ達していないなと」



男性のホームページには、大学の卒業証明などが掲載されていた。東京工業大学を卒業した、とある。

記者
「公表しているのはなぜ?」
西園寺優氏(仮名)
「聞かれるからです。何回も答えるのは非効率的なので」
記者
「学歴とか、“精子のラベル”を見て来られる方もいる?」
西園寺優氏(仮名)
「それはですね・・・多分いると思います」

13年前、不妊に悩む人を救いたいとの思いで活動を始めたという男性。提供はすべて、無償で行っていると話した。自らの存在意義についてはーー



西園寺優氏(仮名)
「私たちみたいな個人ドナーは、積極的に容認されているとかでは決してなくて。いま法制度が整っていなくて、公的な機関とかもサポートしきれない。だから、やむを得なく存在を許されているものだと思っています」

危うい遺伝子取引を、このままにしておいていいのか。重い課題が、突き付けられている。

(報道特集 2022年7月23日放送)
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