「AIで代替できない分野」世論調査を支えるのはオペレーターの気配り
世論調査の屋台骨を支えているのはやはりオペレーター1人1人の相手に対する気配りだ。
オペレーター④「あと少しで調査終わりますからね。もう少しお付き合い願います」
10を超える設問に答えるのも大変だが、それを丁寧に聞き出すことも大変な作業だ。また、内閣や政党の支持など政治という堅い印象の分野の質問ということから答えようと意欲のある人でも「大丈夫かしら」と尻込みする場合が多い。
オペレーター⑤「設問を用意しております。その中からご自分のお考えに最も近い設問を教えて下さい」
またベテランのオペレーターは相手の緊張感をほぐすため様々な工夫を凝らす。
あるオペレーターは朗らかな軽快なリズムで別のオペレーターは自分が日常使っているイントネーションを用いて相手に語りかける。
そして大半のオペレーターに共通して言えることだが、それぞれが間合いを計りながら相手が答えやすいペースで問いを繰り返す。
例えば「次の総理にふさわしい人は」などの設問については答える側も「難しいな」と長考することもある。こうした場合には答えをせかすことなく相手の思考がまとまるまでじっと待つ。
世論調査は答える側にバイアスをかけないため、設問文以外の内容は原則言えない。このため相手と信頼関係を築くための手段はごく限られる。
オペレーターの力量で調査の回答結果は大きく変わると調査会社の担当者は語る。
調査会社担当「こういう質問を自動音声で画一的に行うと回収率は一気に落ちます。やはりAIとかで代替できない分野だと思います」
今月のJNNの世論調査は固定電話・携帯電話合わせて1212の回答を得た。
この結果の背景にはおよそ60人のオペレーターの創意工夫があったことを付言してこのドキュメントを終えたいと思う。
TBSテレビ政治部長 後藤俊広
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後藤俊広
TBSテレビ 報道局政治部長
小泉純一郎内閣時から政治報道に携わる。郵政民営化を巡る自民党の小泉VS民営化反対派の闘いや自民→民主、民主→自民の2度の政権交代などを現場記者として取材する。趣味はプロ野球観戦で中日ドラゴンズの落合博満元監督を取り上げた「嫌われた監督」が座右の書
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