厳しかったセキュリティーチェック

一方で、厳しかったのは、原発構内に入る際のセキュリティーチェックです。

本人確認書類に記載されている住所などの情報は、一字一句正確に届け出る必要がありました。今回の取材では、事前に登録した内容と相違があったので、修正作業が必要になりました。

また、構内に持ち込むものも厳しく制限されていて、スマートフォンやスマートウオッチ、パソコンなど通信機能を有するものは、セキュリティーゲートの手前のロッカーなどに置いていかなければなりませんでした。
構内にはテロ対策などの安全管理上、撮影禁止のエリアが多くあるからです。

そのため、今回の取材では東電の担当者の立ち会いのもと、許可された範囲内でのみ映像撮影を行いました。

廃炉作業の「本丸」にたどり着けてすらいない

井上キャスターがまず最初に訪れたのは、1号機から4号機までの原子炉建屋が見渡せる高台です。

井上貴博キャスター
「線量は10年前に入った時は今回の取材とは桁違いの数字でしたし、変わりましたね」
「ここに立つと相当長い年月をかけてということにはなりますが、一歩一歩進んでいるんだなと感じます」

以前、原発を訪れた時は4号機の内部に入り、核燃料プールから使用済み核燃料が取り出される現場を取材しました。

(2013年11月取材時の様子)
(4号機内部の様子)

あれから10年…。今も作業は続いています。3号機と4号機は、使用済み核燃料の取り出しが完了している一方で、1号機と2号機はまだ、使用済み核燃料が原子炉建屋の中に残されたままです。

(1号機を見ながら)

それ以上に難しいのが「燃料デブリ」の取り出しです。

燃料デブリとは、原子炉格納容器の中で核燃料などが一度溶け落ちた後に、冷えて固まったもの。

1号機から3号機で合わせて880トンに上ると推定されています。

東電担当者
「燃料デブリの取り出しが、今後の福島第一原発の“廃炉作業の本丸”ということになっていきます」

最長で40年かかる廃炉作業の本丸と位置付けられている燃料デブリの取り出し。

東電は2号機から燃料デブリの取り出しを始める予定で、試験的に数グラム程度の燃料デブリを遠隔操作で取り出し、敷地内に専用の容器を設置して保管する計画です。

(現在の2号機の様子)

ただ、2023年度中としていた燃料デブリの取り出しの開始時期については、作業が難航していることなどから開始時期を延期し、2024年10月までの開始を目指しています。

取り出し開始の時期を延期するのは3回目で、廃炉に向けた本丸には、まだ辿り着けてすらいないのが実情です。