接ぎ木(つぎき)苗という技術で、日本の農業を稼げる産業に変えようと挑戦する上場企業がある。高齢化と人手不足に直面する日本の農業。変革のキーワードは農業の「製造業化」だという。
接ぎ木苗を中心に年間4100万本を生産し、売上が53億円を超える日本一の企業、ベルグアース株式会社(愛媛県宇和島市)の山口一彦代表取締役社長に成長を続ける苗ビジネスについて聞いた。
■「接ぎ木苗」とは? 野菜農家の「必需品」


「接ぎ木苗」とは、美味しく収穫量の多い品種の「穂木」と根の張りが良く病害虫に強い「台木」という苗をつなぎ合わせてつくったもの。ナス科やウリ科の野菜は同じ場所で続けて栽培すると生育が悪くなる「連作障害」が起こるため、それを防ぐ「接ぎ木苗」はいまや野菜農家の必需品となっている。
■接ぎ木苗で売上は53億超 急成長する苗ビジネス

現在、この「接ぎ木苗」を中心に年間4100万本を生産する苗ビジネスで日本一の企業が、愛媛県・宇和島市にある「ベルグアース」だ。社長の山口一彦さんは25歳のときに苗ビジネスの将来性に着目し、2001年にベルグアースを設立。売り上げを順調に伸ばし、2011年にジャスダック市場に上場。2021年度の通期売上は53億7000万円。2022年度は65億9000万円を見込んでいる。

接ぎ木苗の作成には熟練の技が必要で手間暇もかかることから、高齢化が進む現状では農家は買わざるを得ない状況にあるという。
ベルグアース 山口社長:
苗は赤ん坊のようなものなので、農家は毎日、極端に言えば24時間暑かったり寒かったり、光が強すぎたり弱すぎたり、ずっと面倒を見なければならないんですね。それはやはり大変な仕事で365日休みがない。
■「ヌードメイク苗」で全国各地への供給体制を構築

そこで、山口社長は全国で接ぎ木苗を全国に供給できる体制作りに取り組んできた。接ぎ木した苗は、あえて根の部分をカットした「ヌードメイク苗」として出荷する。以前はポッド付きの状態で配送していたが、箱に6、7個程度で、時間もコストもかかっていた。一方、「ヌードメイク苗」は同じ箱に60ー80倍の量が入る。これを全国30カ所以上の二次農場に送り、独自の技術で若く強い根を再生させ、その地域に合った苗に仕上げる。すなわちベルグアースはヌードメイク苗の開発で、顧客の注文に全国規模で応えられる体制を実現したのだ。
