米国で、AI普及を背景にデータセンターの建設が進んでいる。巨額の税収や雇用拡大が期待される一方、住民の反発も強まっている。特に財政難に苦しむ地方都市は、経済成長を優先するか、これまでの生活環境を守るかという難しい選択を迫られている。

米中西部アイオワ州クリントンもそんな街の一つだ。ミシシッピ川沿いに位置し、人口は2万4000人。市は財政赤字に苦しみ、人口も数十年にわたって減少してきた。下水道の改修後には債務が倍増した。

米投資会社ブラックストーン傘下のデータセンター運営会社QTSは、巨大なデータセンターの建設が解決策になるとみる。建設で数千人の雇用を生み、最初の10年間で約2億ドル(約312億円)の固定資産税収をもたらす。年間の運営予算が2500万ドルの市にとって、財政を一変させる規模だ。

地元で経済開発を推進する非営利団体グロウ・クリントンを運営するアンディ・ソコロビッチさんは、「われわれは限界まで借金を抱えている」と述べた。「これほどの規模の開発でもなければ、財政を立て直す方法はほとんどない」と語った。

ただ、財政面の恩恵だけで決断することはできない。住民の多くはデータセンターの建設に反対している。騒音や環境悪化、公共料金の上昇につながる可能性があると懸念している。

QTSは声明で「必要なエネルギーやインフラ整備の費用は100%当社が負担する。プロジェクトの費用を公共料金の利用者に転嫁することはない」と説明した。それでも地元の強い反発により、QTSの着工計画は頓挫する可能性がある。

強まる反対の動き

こうした反発は全米に広がっている。データセンター・ウォッチによると、今年第1四半期には住民の反対を受け、米国で約75件、総額1300億ドル規模のデータセンター計画が中止または延期された。最近では、ブルックフィールド・アセット・マネジメントが出資するコンパス・データセンターズとQTSが、米バージニア州北部で計画していたデータセンターの建設を断念した。

ただ、地方自治体にとってデータセンターを断るのは簡単なことではない。ピュー・リサーチ・センターによると、新たなデータセンター計画の3分の2以上が米国の農村部に集中している。大きな税収源がほとんどない小さな町や郡では、行政を担う人材も限られる。非常勤や無給の担当者が、数十億ドル規模の複雑な計画について重要な判断を迫られることも多い。

アイオワ大学ティッピー・カレッジ・オブ・ビジネスのエイミー・コルバート教授は「財政難を背景に、自治体は経済的な恩恵をこれまで以上に重視するようになっている」と述べた。

データセンターを巡る問題は政治にも広がっている。11月の米中間選挙を控え、共和党はデータセンターを強く推進するトランプ米大統領の姿勢と、地方住民の反発との間で対応を迫られている。一方、民主党は建設による雇用を支持する労働組合と、環境への懸念との間で板挟みとなっている。データセンター問題は中間選挙の争点として浮上している。

一部の州では、データセンター開発を一時停止する動きも出ている。かつてデータセンターを推進していた知事の中にも、姿勢を大きく変える例が出てきた。民主党のペンシルベニア州シャピロ知事やイリノイ州のJ・B・プリツカー知事、共和党のテキサス州アボット知事などだ。アボット氏は通常、トランプ氏の政策方針を強くする支持する立場だ。

農村部が抱える問題はより複雑だ。データセンターを歓迎しない住民もいるが、小規模な自治体は大都市やその郊外に比べ、経済成長につながる選択肢が限られている。病院が閉鎖されたり、インターネット接続などの重要なインフラが十分に整備されていなかったりする地域もある。

経済か、文化か

ブルッキングス研究所のシニアフェロー、アンソニー・ピパ氏は「経済面では(データセンターを受け入れることは)合理的に見えるかもしれないが、文化や社会の面ではそうとは言えない」と述べた。

クリントンでも住民の懸念は根強い。計画に反対する地元住民のエイミー・ワイザーさんは「この地域は農地や住宅地として開発されてきた。工業地ではない」と語った。

また、ワイザーさんは生活用水に井戸水を利用しており、広大なQTSの施設が稼働すれば、井戸水が枯れるのではないかと懸念している。一方、QTSはデータセンターに循環式システムを採用しており、「稼働後は冷却に水を使用しない」と説明している。

クリントンのマダシオン市長と市議会は、データセンター開発に一定の制限を設ける条例案を検討している。マダシオン氏は「経済的な恩恵があるのは明らかだ。データセンターから得られる税収は、現在の市の一般会計と比べても巨額になる」と述べた。一方で「ただ、本当にクリントンに適しているのか」とも語った。

原題:Poor Towns Reject Data Centers That Could Help Their Finances(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.