(ブルームバーグ):ホワイトハウスで24日行われるトランプ米大統領と中国の習近平国家主席との首脳会談では、AIが主要議題の一つとなる見通しだ。米中両国はAIを新たな経済覇権争いの主戦場とみている。トランプ氏は13日、「AIを制する者が勝つ」と表明した。
両国が対立を乗り越え、安全で持続可能なAI環境の構築で協力できるかどうかが焦点となる。現時点では互いの意図を信用しておらず、どちらも開発競争のペースを落とすことは望んでいない。
以下、米中AI競争を巡る主な火種をまとめた。
半導体密輸と遠隔アクセス
米国は国家安全保障上の懸念を理由に、米国で設計された最先端AI半導体の中国向け輸出を2022年から制限している。ただ、こうした措置は想定通りに機能していないとの認識が広がっている。
米検察当局は、エヌビディア製の先端AI半導体が中国の顧客向けに密輸された疑いを巡り、大規模な捜査を複数進めてきた。最も注目された事例としては、米司法省が今年、スーパー・マイクロ・コンピューターの共同創業者ウォリー・リャオ氏を起訴した。
エヌビディアの最先端半導体を搭載した米国製サーバーを、輸出規制に違反して中国の顧客に送るのを手助けしたとされる。リャオ氏は無罪を主張しており、エヌビディアは厳格な法令順守体制を整えていると述べている。
また、中国のムーンショットAI(月之暗面)が、米国勢の最先端モデルに迫る性能を持つ大規模言語モデル「Kimi K3」を発表すると、ホワイトハウス当局者は、エヌビディア製半導体を違法に入手し、タイ経由で遠隔利用していたと非難した。中国政府はこの主張に反論している。ムーンショットはコメントしていない。
米議員らはまた、中国のAI企業が他国にある計算能力を借りることで輸出規制の抜け穴を利用しているとも主張している。超党派の法案が現在、議会で審議されており、クラウドコンピューティングを介した中国からのエヌビディア製半導体への遠隔アクセスを制限する内容となっている。商務省も、輸出管理権限を使ってこうした行為を取り締まる方策を検討している。
蒸留
米政府は、ディープシーク、ムーンショットAI、Z.AI、アリババグループのAI部門などの中国企業6社が「産業規模」の蒸留を行い、米国の主要AIモデルと同等の性能を再現していると非難している。
蒸留は広く使われている技術で、大規模で複雑かつ高性能なAIモデルの推論や振る舞いを模倣し、より小型モデルを構築する。費用と時間のかかる訓練を省く近道となるが、許可なく行われれば問題になる。中国政府は、米国側の非難には根拠がないとしている。
この問題で妥協点を見いだすのは容易ではない。米中両国はまず、どのような行為が不適切な蒸留に当たるのかで認識を一致させる必要がある。その上で、証拠を収集し、無断でモデルの能力が抽出されたかどうかを確認する仕組みについても合意しなければならない。
壊滅的リスク
今年に入り、複雑な作業を自律的にこなせる「AIエージェント」が台頭し、人間の介入をほとんど必要とせずに自己改善するAIシステムも現れ始めた。これを受け、AIが人間の制御を超えるとの懸念が、業界で急速に強まっている。業界の有力者からは、新たな安全策を設けなければデジタル環境に計り知れない被害を与え、人類を脅かす恐れすらあるとの警告が出ている。
アンソロピックのダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)は今月、3800語に及ぶ論考でAIが人類存亡に関わる脅威になり得ると警鐘を鳴らし、AIの安全性を巡る議論に火を付けた。アモデイ氏は、リスクへの理解を深めるため、同社の最先端モデル開発を減速させる考えを表明。オープンAIなど競合勢もアモデイ氏に賛同し、同様の措置を講じる意向を示した。
アモデイ氏はAIに対する政府規制の強化も訴えている。米企業が慎重な開発ペースに移行しても中国の競合勢が同調しない恐れがあるとして、米政府はAI安全対策を巡り、国際的な連携を推進する必要があるとの考えを示した。
一方、トランプ大統領は、新たなAI安全策を求めるアモデイ氏の主張に強く反発。AIが人類存亡の危機をもたらすとの警告を「でっち上げ」だと一蹴した。
北京当局もアモデイ氏の論考に反発し、「恐怖をあおっている」と批判。米AI企業が「悪意ある競争」を展開していると非難した。アモデイ氏はかねて、中国のAI企業が半導体など重要機器を入手できないよう米国の輸出規制を強化すべきだと主張し、中国政府と対立してきた。今回の論考でも同様の主張を繰り返した。
一方、中国側も安全面で懸念を表明しており、アンソロピックのAIモデル「Mythos(ミュトス)」が持つサイバー能力が、中国の利益を損なう手段として悪用されかねないとしている。
最先端AIの覇権を巡る熾烈(しれつ)な争いを減速させる枠組みを米中が構築するには、相当な信頼の醸成が必要になる。何を危険なAIシステムとみなすのか、能力が制御可能な範囲を超えた場合にどう対処するのかについても合意しなければならない。
今のところ、協力の余地がある分野としては被害の軽減が挙げられる。重要インフラへの攻撃や新たな生物兵器の設計に悪用されるリスクを回避するため、強力なAIモデルがサイバー犯罪者やテロリストの手に渡らないよう、米中が協力する可能性がある。
安全保障の専門家の一部は、制御不能に陥ったAIエージェントが核指揮系統に侵入したり、AIによるサイバー攻撃を受けた政府が国家による意図的な攻撃と誤認したりする事態に備えるよう、米中両政府に対策を求めている。具体策の1つとして、AIが引き起こした攻撃について、一方の政府が他方に警告するホットラインの設置案が浮上している。
AIヒト型ロボット
AIを搭載し、現実世界でより柔軟に行動できるヒト型ロボットの商業化を巡る競争も激化している。ロボット技術では米企業が多くの先端的成果を上げてきたが、ヒト型ロボットの大規模な商用展開では中国企業が先行しつつある。中国は同分野で欧米市場へのアクセス拡大を求めている。
これに対し米国は、国家安全保障を理由に中国製のヒト型・四足歩行ロボットの輸入を制限している。さらに2027年1月には、中国で採掘、精製、分離、溶融、生産された幅広い素材について、米国の防衛請負企業による調達を禁じる規則が発効する予定だ。中国以外での生産拡大を促す狙いがある。
中国は昨年、関税措置を巡るトランプ政権との対立で、複数の米産業に不可欠な鉱物の供給力を交渉の武器として利用した。国際エネルギー機関(IEA)やジェームズタウン財団などの専門家によれば、中国はヒト型ロボットの大量生産に必要なレアアース磁石やアクチュエーター(駆動装置)部品を含む、重要なハードウエア供給網の複数分野で約80%を握っている。
イーロン・マスク氏が率いるテスラのヒト型ロボット「オプティマス」も、すでに中国による磁石の輸出規制の影響を受けている。最終的に歩み寄りが実現しても、人間の近くで稼働するロボットについて両国が安全基準で合意しなければ、ヒト型ロボットの二国間貿易が本格化するのは難しい。
軍事AI
米国の輸出規制には、中国人民解放軍が最先端の米国製AI半導体を入手し、軍事的優位を得るのを防ぐ狙いもある。
中国の軍事開発計画は極秘に進められているが、AIを重視していることは明らかだ。中国軍を支援する少なくとも7つの大学研究所が、エヌビディアの先端半導体を入手しようとしてきた。関心を示した機関のうち北京航空航天大学と西北工業大学は、人民解放軍への支援を担う7つの大学群「国防七子」に含まれる。
原題:The Tough AI Questions Looming Over Trump-Xi Summit: Explainer(抜粋)
--取材協力:Michael Shepard、Wendy Benjaminson.
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