「M&A巧者」とされるミネベアミツミの貝沼由久会長最高経営責任者(CEO)は、成長の手段として重視してきた新分野の買収を凍結する考えを明らかにした。AI需要を取り込むための投資を優先する。

データセンター向けのボールベアリングやモーターなど、同社が強みとする機械部品に新たな成長機会が生まれている。貝沼氏は11日のインタビューで、新分野を開拓するM&A(合併・買収)は「基本的にはない」と説明。M&Aを通じて新しい分野に経営のリソースをつぎ込むより、足元で膨らむ需要に対応する方が重要だと述べた。

貝沼氏の発言からは、AI向け需要の拡大が半導体だけではなく、多くの日本の製造業に恩恵をもたらし、企業の戦略転換をも引き起こしていることがわかる。2009年に同氏が社長に就任して以来、ミネベアは30件の買収を手がけ、新しい領域を開拓することで成長につなげてきた。昨年も芝浦電子を巡り、台湾のヤゲオと買収合戦を繰り広げた。

相次ぐM&Aの背景には、市場の主役が半導体やセンサーへ移る中、機械部品が斜陽化するのではないかとの危機感あったという。ただAIの登場で状況が一変した。

「M&Aはあくまでも手段」で、オーガニック(既存事業)がものすごい伸びていく時代に再び突入した訳だから、当然われわれの経営視線も変わってしかるべきだ」と貝沼氏は話す。

Photographer: 撮影:太田清/ブルームバーグ

米エヌビディアの次世代AIプラットフォーム「Vera Rubin(ベラ・ルービン)」の登場で水冷システムの普及が進めば、ミネベアミツミ製品の活躍の場はさらに広がると貝沼氏はみる。その先には、人間のように滑らかに動くヒューマノイドロボットの普及による新たな需要も見込む。

高級車1台に使われるベアリングが60個なのに対し、ロボットでは400個超を使うといい、同分野に用途が広がれば、販売数量が飛躍的に伸びる可能性もある。

「先が見えない」時期もあったが、今後10-15年で「何がメジャーになっていくかが霧が晴れたように見えてきた」と自信をのぞかせる。

慎重に投資判断

課題は、急増する需要に生産能力をどう追いつかせるかだ。広報部によると、同社は580億円を投じ、月間4億個強のボールベアリング生産能力を2030年までに5億個へ引き上げる計画だ。ただ、このペースではAI市場の成長に追いつけないとの外部調査もあり、投資家からは増産前倒しを求める声もあがる。

貝沼氏は、決断さえすれば設備増強は1年以内に可能だと強調した。一方で、AI需要を前提に投資を急ぐことには慎重だ。

AIサーバー事業は需要が安定しているように見える半面、期間が長い分だけリスクも大きいと指摘。「決めつけることがリスクになる」とし、市場動向を冷静に見極める姿勢を示した。

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