AIがどこまで、どの程度の速さで進歩しているのかを巡る議論は、テクノロジー企業の経営幹部に深刻なジレンマを突き付けている。経営幹部らは、AIがもたらしかねない危険への懸念を積極的に発信し、開発ペースの減速を含むさまざまな対策を提案している。一方、AIに数千億ドルを投じてきただけに、投資家や顧客を動揺させることなく、人々の不安を和らげようとしている。

議論は先週、一段と激しくなった。アンソロピックの研究者ジェイコブ・コクソン氏が退職し、AIを開発する研究者らは「2030年までにAIがわれわれ全員を死なせる可能性があると本気で考えている」と警告したことがきっかけとなった。こうした懸念には、アンソロピックの他の関係者からも公に示された。アラインメント科学責任者のエバン・ヒュービンガー氏は、この技術が今後10年以内に人類を絶滅させる確率は10%を超えるとの見方を示した。

トランプ米大統領もこの問題に言及し、AIに安全策が必要との考えを退けるとともに、アンソロピックの最高経営責任者(CEO)、ダリオ・アモデイ氏を批判した。アモデイ氏は12日のブログ投稿で、AIの能力向上が安全策の整備を上回るペースで進んでいると主張。企業や政府による連携の強化と、より独立性の高い監督体制を提案した。

一方、トランプ氏は14日、トゥルースソーシャルへの投稿で、AIデータセンターに対する有権者の反発や最先端モデルへの懸念の高まりについて「病的な陰謀」のせいだとし、「それを喜んでいるのは中国だけだ」と話した。

Photographer: Jason Henry/Bloomberg

AIの今後の方向性について、業界を代表する経営幹部らの発言は以下の通り。

イーロン・マスク氏、スペースX/スペースXAI

X(旧ツイッター)への投稿で「ダリオは正しい」と述べた。

サム・アルトマン氏、OpenAI

Xへの投稿で「最先端AIのペースを調整する必要があるというダリオ氏の意見に賛成だ。これはここ数週間、OpenAIで行ってきた議論の主要テーマとなっている。従業員と同等のアクセス権を持つ独立した評価担当者の受け入れを確約するのは素晴らしい考えで、われわれも同じことをする。近くさらに詳しい内容を発表する」と記した。

サム・アルトマン氏

エイダン・ゴメス氏、コヒア

ゴメス氏は、AI開発を一律に減速させる提案を批判するブログへの投稿で「既存の商業上の優位性を明確に温存しながら、全員の開発を遅らせる仕組みを導入しても、AIがより安全になるわけではない」と指摘。安全策は必要だとした上で、AI開発は社会が対応できる責任あるペースで進めるべきだと主張した。

サティア・ナデラ氏、マイクロソフト

Xへの投稿で「超知能を追求するのであれば、われわれが構築するAIが人類の役に立たず、人間の管理下にもないなら、追求する価値はないという基本原則に立脚しなければならない」と記した。

サティア・ナデラ氏

クレメント・デラング氏、ハギングフェイス

アモデイ氏のXへの投稿を引用しながら「アラインメントが極めて重要であり、一握りの最先端AI研究所が密室で解決できる問題ではないことは、今や明らかだ」と記した。ハギングフェイスのオープン・アラインメント・イニシアチブを発表するとともに、アモデイ氏がアンソロピックの参加を表明したばかりの「外部評価者受け入れ」プログラムに、ハギングフェイスも参加を希望していると述べた。

ジョージ・カーツ氏、クラウドストライク

Xへの投稿で「次に来るもののペースを調整しても、すでに存在するものの安全性は確保できない」と述べた。AI開発の減速を図るのではなく、サイバーセキュリティー業界は、自律性を増すAIシステムに対応できる防御体制の構築に注力すべきだと主張。独立したテストやセキュリティー管理の強化、重大な影響を伴う意思決定に対する人間の監督などを挙げた。

マーク・ザッカーバーグ氏、メタ

先週、ポッドキャストの番組で「個人的には、これほど高い能力を持つものを少数の研究所や人々が支配することの方をはるかに懸念している」と述べた。AIへのアクセスが少数の企業に集中するより、広く分散している方が安全だと主張した。高度化するAIモデルを開発しながら公開しない研究所の姿勢について「かなり危険だ」と批判したが、具体的な企業名は挙げなかった。

原題:Tech Leaders Try to Voice AI Concerns Without Spooking Investors(抜粋)

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