メリハリで選ぶ、チートデー世代
若い世代を中心に浸透している「チートデー」――ダイエット中でも、普段の食事制限を一時的に緩める日――にも、ギルティ消費と共通する発想が見て取れます。
かつてのダイエットは、「食べたいものを我慢する」、あるいは「我慢できずに食べてしまう」という構図で語られがちでした。
一方、今は「普段は節制するけれど、今日は計画的に楽しむ」という、メリハリをつけた考え方が浸透しつつあるのではないでしょうか。
特に若い世代は、「今日はチートデーだから大丈夫」と自分でルールを設け、食べることを楽しんでいるように見えます。欲望をなくそうとするのではなく、一定の枠組みをつくることで、欲望とうまく付き合う。そこには、我慢一辺倒ではない、新しい自己管理のあり方が表れているとも言えそうです。
「ご褒美消費」との違いと「メンパ消費」との接続
似た言葉に「ご褒美消費」がありますが、両者は似ているようで、楽しさの源泉が少し異なります。
ご褒美消費は、仕事や勉強などを頑張った自分への報酬として、何かを買ったり、特別な体験を楽しんだりする消費です。少し高価なものや特別な体験を選ぶことも多く、「頑張ったから楽しむ」という理由があります。
一方、ギルティ消費では、価格が高い必要はありません。200円の炭酸飲料や300円のパンでも、「体に良くなさそうだけど、今日くらいはいいよね」と自分に許可を出し、少しの背徳感とともに味わうことに価値があります。物価高で大きなぜいたくが難しい時代だからこそ、こうした手の届く範囲の背徳感が、一つの楽しみとして受け入れられているとも考えられます。
もう一つ、見逃せない背景があります。
仕事や職業生活に関して強い不安や悩み、ストレスを感じている労働者は67.5%を占めます。その内容を見ると、「仕事の量」と「仕事の失敗、責任の発生等」がともに26.7%で最も多く、次いで「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」が22.2%となっています。

多くの人が仕事を通じて強いストレスを感じるなか、手軽に気分を切り替える手段の一つとして、ギルティ消費が選ばれている面もあるのかもしれません。
この文脈で興味深いのが、私が最近注目している「メンパ消費」――メンタルパフォーマンス消費――との関係です。メンパ消費とは、心の消耗を抑えながら、自分なりの満足を得るための消費のことです。ギルティ消費も、実はその一つの形と捉えることができます。
一見すると、両者は正反対のように見えます。メンパ消費には、散歩やサウナ、アロマなど、どちらかといえば心身の健康を意識した行動が含まれます。一方、ギルティ消費は、健康志向とは逆方向に見えるものをあえて食べる行為です。
しかし、その目的に目を向ければ、どちらも「気分を整える」ための消費という点で共通しています。手段の方向性は異なっていても、心を少し軽くするという目的は同じなのです。
これから~背徳感を演出に変える時代へ
ギルティ消費を意識した商品は、今後も消費者の関心を集めるとみています。ただし、これから伸びるのは、単に「もっと高カロリーに」という方向ではなく、背徳感そのものを楽しませる演出ではないでしょうか。
企業側でも、後ろめたさを隠すのではなく、商品名やコピー、見た目などを通じて、あえて魅力へと変える工夫が進むと考えます。
「今日くらいはいいよね」「たまには自分を甘やかそう」というストーリーまで含めて買う。そんな消費が、さらに広がっていくのではないでしょうか。
ギルティ消費が支持されるのは、私たちがふだん、それだけ自分を律し、頑張っているからこそかもしれません。いつも最適であろうとするのではなく、ときには自分で決めたルールを少しだけ緩める。その余白も、明日を心地よく過ごすための大切な栄養になるのでしょう。今夜あたり、少し背徳感のある一品を楽しんでみてはいかがでしょうか。
(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 生活研究部 上席研究員 久我 尚子)