イエメンの親イラン武装組織フーシ派が支配地域を拡大し、サウジアラビアの石油インフラに攻撃を続けている。サウジが突きつけられた選択肢は2つ。長年打倒できなかった相手に対して軍事作戦をエスカレートさせるか、自国の原油輸出にとって重要性を増している紅海の輸送ルートにフーシ派の影響力拡大を許すのかだ。

フーシ派はイエメンの紅海沿岸をバベルマンデブ海峡に向かって南進。港湾都市モカの周辺や海峡の中央に位置するマユーン島などを制圧する一方、ミサイルやドローンでサウジアラビアを攻撃している。これによりサウジでは、一部のエネルギー施設が操業停止に追い込まれた。

米国とイスラエルが対イラン戦争を開始して以降、イランがホルムズ海峡の通航を妨げているだけに、サウジが原油輸出を続ける上で紅海の重要性は大きく増していた。それがフーシ派との戦闘激化で紅海ルートも支障を来し、サウジの8月の原油輸出は前月比で30%余り減少して日量約300万バレルと、ほぼ9年半ぶりの低水準に落ち込んだ。

フーシ派がバベルマンデブ海峡周辺の支配を強めれば、ホルムズ海峡に次ぐエネルギー輸送の要衝を通る船舶を妨害できる能力が拡大する。戦争ですでに高騰している原油価格にさらなる上昇圧力を加え、戦争の影響から自国経済を守ろうとするサウジアラビアの取り組みを難しくする恐れもある。

サウジでは週末に当たる11日に送付したコメントの要請に、政府の報道担当から直ちには回答がなかった。

サウジとアラブ首長国連邦(UAE)の亀裂も、状況を悪化させている。両国は共同でフーシ派と戦ってきたが、地域の紛争で相対する側に立つことが増え、昨年終盤にUAEがイエメン南部の分離主義勢力を支持した際には対立が表面化した。サウジ主導の連合軍はこれをきっかけに、フーシ派から守ってきた領土から、この分離主義勢力を駆逐した。

サウジは8月にトルコ、パキスタンと「メッカ共同防衛協定」を締結し、安全保障の強化を図ってきた。同協定では、いずれか1カ国が攻撃を受けた場合、3カ国全てに対する攻撃とみなすことが定められている。

フーシ派による攻撃が同協定の相互防衛条項の発動につながる可能性があるとの見方を、パキスタンは示している。ただ、サウジも他の2カ国も、最近の攻撃での発動を求めていない。

非政府組織(NGO)「国際危機グループ」のイエメン担当シニアアナリスト、アハメド・ナギ氏は、「サウジはイエメン政府への軍事・資金支援を増やし、フーシ派と戦う部隊の強化を図ることができる。しかし、最近の展開はサウジの支援だけでは戦況を逆転させるには不十分な可能性があることを示している」と語った。

アクシオスが匿名の米当局者2人の話として報じたところによると、サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は10日、トランプ米大統領に2度電話し、フーシ派を攻撃するよう求めた。米国はこれまで、この戦闘への介入を控えている。

トランプ氏には、介入に慎重になる理由がある。米国はすでにイランとの不人気な戦争を続けており、フーシ派への直接攻撃に踏み切れば、戦争による経済的・政治的影響を抑え込もうと躍起になっている中で新たな戦線を開くリスクを伴う。

「サウジが説得に成功すれば、米国が空爆で介入する可能性はあるが、空爆だけでは状況は大きく変わらないだろう」と、中東研究所の研究者で紛争アナリスト、ナドワ・アルダワルシ氏は述べ、「米国は過去に数カ月にわたってフーシ派を空爆したが、それでもこの状況だ」と指摘。

結局のところ、フーシ派の脅威を封じ込めるためには、国際的に承認されたイエメン政府と関係する勢力が領土を奪還し、その支配を維持しなければならないと同氏は論じた。

だが、サウジ支援のイエメン軍は分裂し、フーシ派による最近の攻勢に苦戦している。サウジによる支援拡大なしに、この勢力がどこまで成果を上げられるのか、疑問は膨らんでいる。

原題:Houthi Gains Leave MBS With Few Good Options in Yemen(抜粋)

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