(ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ議長は先週、ワイオミング州ジャクソンホールで行った基調講演で、米経済を判断する上で重視する主な経済指標の一部を示し、金融政策運営に対する自身のアプローチを新たに明らかにした。
示された指標は網羅的でも決定的でもなく、ウォーシュ議長はFRBによる経済データの分析方法を見直す方針を表明している。それでも今回の発言は、5月のFRB議長就任後、同氏の見方を形作る経済指標をこれまでで最も明確に示すものとなった。
以下は、ウォーシュ議長が講演で挙げた主な指標の内訳。大半は米経済に明るい兆しがあることを示している。
投資ブーム
ウォーシュ議長は企業の設備投資について「将来の経済成長の種」と表現した。
テクノロジー企業はAIブームに必要な機器やインフラに数千億ドルを投じている。4-6月期の非住宅固定投資、いわゆる設備投資は年率8.5%増加した。
ウォーシュ議長の発言:
「機器と無形資産への投資は4四半期ベースで約9%増加し、2021年以来の高い伸びとなっている。今年の設備投資の伸びの半分以上は、AI関連の整備によるものとみられる」

企業利益
企業利益は引き続き堅調に推移している。米企業の利益率を示す指標は4-6月期に底堅い個人消費や値上げを背景に過去最高に上昇した。
米経済分析局(BEA)が先週発表したデータによると、利益マージンの指標である粗付加価値(GVA)に占める税引き後利益の比率は18.2%から19.4%に上昇した。1940年代までさかのぼる統計で最高となった。
ウォーシュ議長の発言:
「S&P500種株価指数の構成企業では、利益が過去1年間で20%超増加した。利益率は過去と比べてかなり高い。株式市場全体のボラティリティーは低い。われわれは市場内部の動向を注意深く見極め、セクター別のパフォーマンスを注視している」

信用市場
ウォーシュ議長は、社債やレバレッジドローンの信用スプレッドが歴史的に低い水準にあり、投資家の強い信頼感を示していると指摘した。FRBの銀行融資担当者調査(SLOOS)にも言及。商工業向け融資の貸出基準は、過去と比べて緩い水準にあると述べた。
ウォーシュ議長の発言:
「これが、こうした融資が今年増加している理由の説明になる。信用・融資市場には、金融政策による引き締めの影響を示す兆候はほとんど見られない」

個人消費
根強いインフレによって需要が鈍化すると予想していた多くのエコノミストにとって、個人消費の強さは引き続き予想外のものとなっている。7月には消費に一服感が見られたものの、4-6月期を通じてインフレ調整後の支出は堅調だった。
ウォーシュ議長は講演で、政府支出や在庫、純輸出を除いた需要の指標である民間国内最終需要に焦点を当て、今年は約3%増加したと指摘した。
ウォーシュ議長の発言:
「この指標は通常、国内総生産(GDP)よりも経済の動向を的確に示す。そして、ここでも傾向は良好だ」

雇用
ウォーシュ議長は、労働市場は安定しているとの認識を示した。転職など人の動きが低調であることは認めつつ、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後の数年間に企業と労働者の間で活発なマッチングが進んだ反動だと説明した。労働供給の伸びが鈍いため、雇用の増加も自然に抑えられるとの見方も示した。
一部に弱さはあるものの、ウォーシュ議長は「働きたい人は、おおむね仕事を維持するか、新たな仕事を見つけている。将来、労働市場が混乱する可能性を懸念しているかもしれないが、現時点では、労働市場は完全雇用と整合的だと考えている」と述べた。

インフレ
インフレ率は依然としてFRBの2%目標を大きく上回っているものの、最近の指標は鈍化の兆しを示している。食品とエネルギーを除くコア個人消費支出(PCE)価格指数は7月に前月比0.2%、前年同月比で3.3%上昇した。一部のアナリストは、7月の個人消費が伸び悩んだことと合わせ、FRBが政策を据え置く余地が生じたと指摘している。
ウォーシュ議長は、インフレの基調をより正確に把握するため、PCE価格指数を構成する199品目を個別に分析することを重視していると述べた。
ウォーシュ議長の発言:
「過去12カ月に、PCEの対象となる財・サービスの54%で価格が3%を超えて上昇した。パンデミック後のピークだった約77%を大きく下回っているが、パンデミック前の20年間の32%をなお大幅に上回っている」

インフレ期待
ウォーシュ議長は、長期的な物価安定を実現するFRBの信認を測る指標であるインフレ期待も注視していることを明確にした。インフレ率がFRBの目標を5年間上回っているにもかかわらず、インフレ期待が抑制されているように見えることを非常に心強いと評価する一方、警戒も怠るべきではないとの考えを示した。
ウォーシュ議長の発言:
「経済の歴史を振り返ると、市場が示すインフレ期待は、そうでなくなるまでは強固で安定しているように見えるものだ。こうした期待は簡単には揺らがず、現時点ではしっかりと安定している。ただ、注意深く見守る必要がある」

原題:Warsh Lays Out His Data Dashboard for Reading the US Economy(抜粋)
--取材協力:Reade Pickert.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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