韓国で負担の大きい模擬トレーディング講習が、4兆3000億ドル(約688兆円)規模の国内株式市場を極めて不安定にしてきた高リスク商品への投資熱を冷ます有効な手段となっている。

サムスン電子とSKハイニックスの日々の株価リターンの2倍を目指すレバレッジ型上場投資信託(ETF)は、売買代金が6月に記録したピークの4%まで急減し、初の月間資金流出となる見通しだ。

需要を冷え込ませる大きな要因となっているのが、一連の規制強化だ。直近では、5日間の模擬取引を修了することが義務付けられた。

投資家はパソコンに基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」向けの専用プログラムをダウンロードし、1日最低1時間、仮想資金を使ってレバレッジ取引の仕組みとリスクを学ばなければならない。韓国の個人投資家数人への取材では、8月19日に発効した新たな要件は負担が大き過ぎるとの声が聞かれた。

ソウル郊外の京畿道に住むキム・ジョンフンさん(41)は、模擬トレーディング義務化について聞いた際、最初に思ったのは「面倒過ぎる」ため、やってみようとすら思わないということだった。

キムさんは「時間が長いように感じるし、プログラムはパソコンでしかダウンロードできない」と述べ、「職場のパソコンには外部プログラムをダウンロードできない。別のノートパソコンを職場に持って行くのも簡単ではなさそうだ」と明らかにした。

模擬取引は、世界のAIサプライチェーンで大きな存在感を持つサムスン電子とSKハイニックスの半導体2社に連動するレバレッジ型ETFの取引を抑制するため、7月以降に導入された一連の規制措置に加わった。これまでの規制強化には、最低預託金の引き上げも含まれる。

こうした単一銘柄ETFは、個人投資家の資金を国内市場に呼び込むため5月に導入されたが、瞬く間に政治的な争点となった。最盛期には、レバレッジ商品の売買代金と半導体2社の株式の売買代金を合わせると市場全体の80%超を占め、株価の激しい変動を引き起こした。

この制度では投資家に1億ウォン(約1200万円)の仮想資金が与えられ、高リスク商品の取引に伴う危険性を実体験できる。レバレッジ商品では時間の経過とともにリターンが目減りする、いわゆる「ボラティリティーディケイ」を体験できる仕組みだ。

名字のみの公表を希望した別の個人投資家、イさんは、3000万ウォンの最低預託金を含む他の前提条件はすべて満たしたものの、模擬トレーディング講習が障壁になったと語った。

イさんは「プログラムをダウンロードする必要があり、最低受講時間の要件もあった」と話し、新たに会員アカウントも作成する必要があったと説明。「だから先には進まなかった。そこでやめた」と打ち明けた。

韓国取引所は、制度開始後にプログラムをダウンロードした人や模擬取引システムを試した人の数について、公表していない。取引所はモバイル向け講習プラットフォームを導入する計画はないとしている。

ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)がまとめたデータによると、サムスン電子とSKハイニックスに連動する単一銘柄ETFからは8月に入ってこれまでに計約10億ドルが流出し、初の月間資金流出となる方向。データはソウル市場に上場する商品を対象としている。

両ETFの運用資産残高は8月27日時点で計50億ドルと、6月後半に付けたピークの114億ドルから減少した。AI分野の巨額投資や収益化の見通しへの懸念から世界的なハイテク株売りが相次いだことが、急減につながった。

BIのアナリスト、レベッカ・シン氏は「規制当局が規則の厳格化を続けているため、目先は資金流出が続く可能性がある」と指摘し、「韓国当局は、こうした商品を支援する姿勢から積極的に抑制する姿勢へと転じた」と語った。

取引の急速な縮小は、より高い水準で売却して利益を確定したい既存投資家には不満の種となる可能性がある一方、市場の安定化には寄与している。

韓国総合株価指数(KOSPI)のボラティリティー指標は、6月下旬に付けた97のピークから約50まで低下し、4カ月ぶりの低水準となった。KOSPIは年初来で61%上昇しているものの、2カ月前の過去最高値をなお25%下回っている。

個人投資家のパク・キドクさん(39)は、AI関連トレーディングの魅力が薄れたことで、レバレッジ型ETFを取引する意欲がそがれたという。「AIやメモリー半導体業界の状況が良くない中で、規制上のハードルをすべて乗り越えてまで取引したいとは思わない。市場環境がもっと良く、こうした取引で利益を上げられるとの確信があれば、すべての手続きをこなしてもいい」と考えているそうだ。

原題:Day Traders Are Abandoning Korean Chip Leveraged ETFs in Droves(抜粋)

--取材協力:Jack Wang.

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.