■要旨
・米国のAI関連投資が急拡大し、経済成長の約3分の1に寄与。
・主要企業のAI設備投資は高水準を保つが、今後の伸びは鈍化。
・電力や水不足等のインフラ制約が、今後のAI投資拡大の重石。

はじめに
生成AIの普及を背景に、米国ではデータセンターやコンピューターなどAI関連分野への投資が急拡大している。こうした投資は、データセンター建設や関連業種の雇用増加を通じて実体経済に波及しているほか、足元では米国のGDP成長率を押し上げる重要な要因となっている。
さらに、米国の主要テック企業は26年に高水準の設備投資を計画しており、27年も高水準が続くと見込まれる。AI関連投資の拡大は当面続くことが見込まれる。一方、データセンターの急増に伴う電力・水需要の拡大など、巨額の投資計画を実現するうえでの制約も顕在化しつつある。
本稿では、AI関連投資が米国経済の成長や雇用、生産性に与えている影響を整理したうえで、主要テック企業の設備投資計画やインフラ面の制約を踏まえ、AI投資ブームの持続性について考察する。
米国経済を牽引するAI関連投資
(データセンター)建設支出は公共交通インフラを上回る
生成AIの普及を背景としたデータセンター建設の急増は、米国の建設投資を大きく押し上げている。米国国勢調査局によれば、データセンターの建設支出は22年頃から増加ペースが加速し、25年秋には公共交通インフラの建設支出を明確に上回った。26年6月には季節調整済年率で683億ドルと、公共交通インフラの528億ドルを3割近く上回っている。
データセンターの建設支出は22年末時点では100億ドル程度にとどまっていたことから、3年半程度で6倍超に拡大したことになる。道路や鉄道などの公共交通インフラを上回る規模にまで拡大したことは、AI関連投資が米国の建設投資において存在感を急速に高めていることを示している。

(雇用)雇用全体が伸び悩む中でも関連業種では増加
データセンター建設の急拡大は、関連業種の雇用にも波及している。商業・施設建設、電気・配線工事、配管・空調工事の雇用者数を合計すると、22年1月の約290万人から26年6月には約327万人へ増加した。22年1月を100とした指数では、データセンター建設関連業種は26年6月には約115まで上昇したのに対し、非農業部門全体は約106にとどまっている。
とりわけ、25年以降、非農業部門全体の雇用がほとんど増加していないのに対し、データセンター建設関連業種では雇用の増加が続いており、AI関連投資の拡大が関連分野の雇用を下支えしている

(輸入)AI関連機器の輸入も急増
AI関連投資の拡大に伴い、コンピューターや半導体などの輸入も急増している。コンピューター・周辺機器・部品の輸入額は、24年10-12月期の年率2,260億ドルから26年4-6月期には5,935億ドルへ、1年半で2.6倍に増加した。半導体・関連デバイスについても、25年後半から増加が加速し、26年4-6月期には1,364億ドルに達している。
米国内でデータセンター建設や設備投資が急増する一方、そこで使用されるコンピューターや半導体などの供給を海外に依存する部分も大きい。このため、AI関連投資の増加は国内需要を押し上げる一方、輸入の増加を通じて純輸出を押し下げる側面もある。

(成長率寄与度)輸入増を考慮してもAI関連分野が成長率の約3分の1に寄与
では、こうしたAI関連投資の拡大は、米国の経済成長をどの程度押し上げているのだろうか。FRBは、AI関連分野としてソフトウェア、データセンター、電力設備、コンピューター・周辺機器への設備投資に加え、コンピューター・周辺機器の純輸出を対象とし、それぞれの実質GDP成長率への寄与度を試算している。本稿でもこのFRBの推計方法に準じ、最新のBEAデータを用いてAI関連分野の成長率寄与度を試算した。FRB自身も、国民経済計算にはAI投資に対応する独立した項目がないため、この推計はAI関連投資の寄与を把握するための近似値と位置付けている。
具体的には、ソフトウェア、データセンター、電力設備、コンピューター・周辺機器について、それぞれの設備投資の実質GDP成長率への寄与度を算出している。これに加えて重要なのが、コンピューター・周辺機器の純輸出の調整である。前述のようにAI関連投資の拡大に伴って関連機器の輸入が急増しており、国内設備投資だけを集計すると、AI関連分野による成長率の押し上げを過大評価することになる。そこでFRBは、コンピューター・周辺機器・部品の輸出によるプラス寄与と輸入によるマイナス寄与をそれぞれ推計し、両者を合わせた純輸出の寄与度を設備投資の寄与度に加えている。
ただし、BEAの統計からは、コンピューターなどの輸出入のうち、設備投資向けと消費向けを直接区別することができない。このためFRBは、輸出・輸入それぞれについて、資本財・関連部品が資本財と消費財の合計に占める割合を用いて、コンピューターなどの名目輸出入額のうち設備投資に対応するとみられる部分を推計している。本稿もこの方法に準じて純輸出の寄与度を試算した。したがって、図表の「純輸出(コンピューター・周辺機器)」は、関連機器の純輸出額をそのまま成長率寄与度に換算したものではなく、設備投資に対応するとみられる部分に調整した推計値である。
試算結果をみると、AI関連分野の実質GDP成長率への寄与度は25年以降大きく拡大している。25年1-3月期には、ソフトウェアやコンピューター・周辺機器への設備投資が大きく成長率を押し上げた一方、純輸出は▲0.5%ポイント程度のマイナス寄与となり、設備投資による押し上げの相当部分を相殺した。その後も、25年10-12月期や26年1-3月期には、関連機器の輸入増加による大幅なマイナス寄与がみられる。FRBも、輸入が急増した四半期には純輸出のマイナスが設備投資のプラス効果の多くを相殺していると指摘している。
それでも、26年4-6月期のAI関連分野の寄与度は約+0.5%ポイントとなり、同時期の実質GDP成長率(+1.5%)に占める割合はおよそ3分の1に達した。AI関連投資に伴う輸入増による成長率の押し下げまで考慮しても、AI関連分野が米経済の成長を支える重要な要因となっていることが分かる。
(生産性)AI普及は中長期的に潜在成長率を押し上げる可能性
米国では、AI関連投資の拡大と並行して労働生産性の改善も目立っている。非農業部門の労働生産性は23年以降、上昇基調が鮮明となり、26年には17年=100とする指数で120程度と、07~18年のトレンドを延長した111程度を大きく上回っている。
もっとも、こうした生産性の上振れをAIの効果と直接結びつけることには慎重であるべきだろう。生産性がコロナ禍前のトレンドから上方に乖離し始めたのは生成AIが本格的に普及する以前の20年であり、コロナ禍に伴う雇用構成の変化など他の要因も影響した可能性がある。
一方、AIの活用が幅広い業種に広がれば、業務の自動化・効率化などを通じて労働生産性を押し上げることが期待される。議会予算局(CBO)は、生成AI普及により、今後10年間のTFP(全要素生産性)成長率が年平均+0.1%ポイント程度押し上げられると試算しており、中長期的にはAIの普及が生産性向上を通じて潜在成長率を押し上げることが期待される。

AI投資ブームは持続するのか
(設備投資計画)26年~27年も高水準の投資が継続、ただし伸びは鈍化
米国の主要テック企業によるAI関連を中心とした設備投資は、26年以降も高水準が続く見通しである。アマゾン、グーグル、メタ、マイクロソフトなど主要企業の設備投資額を合計すると、25年の約4,200億ドルから26年には約8,600億ドルへと倍増する計画となっている。各社はAI向けデータセンターの建設や半導体、サーバーなどへの投資を積極化しており、AI関連の設備投資ブームは少なくとも26年までは続く公算が大きい。

一方、27年の設備投資額は約9,400億ドルと一段と増加するものの、前年比の伸び率は26年の約100%から10%程度まで大幅に鈍化する見通しである。これは投資額そのものが減少することを意味するものではなく、26年に設備投資の水準が急激に切り上がることによる反動が大きい。したがって、27年もAI関連を中心とした設備投資は極めて高い水準を維持するとみられるものの、これまでのような投資額の急拡大が持続する局面から、高水準の投資を継続する局面へ移行する可能性がある。
(インフラ制約)電力・水需要の急増が投資拡大の制約となる可能性
一方、データセンター投資の急拡大に伴い、電力や水などのインフラ制約が今後の投資拡大のボトルネックとなる可能性がある。とりわけ、生成AIでは大量の計算処理を行う高性能半導体を稼働させるため、多くの電力を必要とする。米国電力研究所(EPRI)は米国のデータセンターによる年間電力消費量の予測に関して複数のシナリオを示しており、その中位ケースでは、24年の約180TWh(1兆ワット時)から30年には約600TWhへと3倍超に増加すると試算されている。こうした急激な需要増加に対して、発電設備や送電網の増強には時間を要することから、十分な電力を確保できるかがデータセンターの新設や増設を左右する重要な要因となろう。
さらに、データセンターの拡大は水資源への負荷も高める。ローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)のレポートによれば、米国のデータセンターが冷却などで直接消費する水量は、14年の212億リットルから23年には660億リットルへと3倍強に増加した。さらに、28年にはハイパースケール型のデータセンターだけで年間600億~1,240億リットルを消費すると予測されている。 データセンターでは、サーバーから発生する大量の熱を除去するために冷却が不可欠であり、特に蒸発を利用した冷却方式はエネルギー効率が高い一方、相当量の水を消費するというトレードオフがある。
また、水需要は施設内の冷却にとどまらない。データセンターが使用する電力の発電段階でも、火力・原子力発電所の冷却や水力発電用の貯水池から大気中への蒸発などを通じて水が消費される。 LBNLの試算では、23年の米国データセンターの電力使用に伴う間接的な水消費量は約8,000億リットルと、施設内で直接使用する水を大幅に上回る。 このため、データセンターの立地が集中する地域では、電力供給能力に加えて水資源を巡っても住民や他の利用者との競合が強まり、地域社会からの反発や許認可の遅れにつながる可能性がある。電力・水インフラの整備がデータセンター建設のペースに追いつかなければ、主要テック企業が巨額の投資余力を有していても、物理的な供給制約によってAI関連投資の拡大ペースが抑制される可能性がある。
(まとめ)AI投資は高水準が続くも、拡大ペースは徐々に鈍化へ
以上を踏まえると、AI関連投資は少なくとも26~27年にかけて高水準が続く可能性が高い。主要テック企業は26年に設備投資を大幅に増やす計画であり、27年も投資額そのものはさらに拡大する見通しである一方、前年比の伸びは大きく鈍化する見通しである。 このため、AI投資はこれまでの急拡大局面から、高水準の投資を継続する局面へ移行していくとみられる。
もっとも、今後は資金面よりも電力・水などのインフラ供給や地域社会の受け入れが投資拡大の制約となる可能性に注意が必要だ。実際、データセンターの電力需要は急増が見込まれるほか、水使用量も大幅に増加している。こうした制約が深刻化すれば、企業に投資意欲や資金力があっても、データセンター建設のペースが抑えられる可能性がある。
したがって、AI関連投資は当面高水準が続くとみられるものの、今後は投資の伸びが鈍化するなか、電力・水などのインフラ制約が投資拡大の重石となる可能性がある。
(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員 窪谷 浩)