(ブルームバーグ):米ニューヨーク在住の公立学校教師、スティーブン・スパーリングさん(51)は、お茶1杯のために2時間も列に並ぶ価値があるとは思っていなかった。
だが、マンハッタンのアッパーイーストサイドに新たにオープンした中国の人気ティードリンクチェーン「喜茶(Heytea)」の店舗が、その考えを変えた。
スパーリングさんは「店に入ってみて、なぜあれほど長い行列ができていたのか分かった。もともとお茶にはそれほど興味がなかったが、今は少しずつ好きになってきている」と、喜茶のグアバグリーンティーを飲みながら語った。
喜茶や悸動(Teapulse)、蜜雪氷城(Mixue)など中国発のティーチェーンが、ニューヨークをはじめ米国各地で急速に店舗網を拡大し、コーヒー派の消費者を取り込んでいる。日本でも喜茶が2025年2月に大阪・道頓堀に1号店をオープン。蜜雪氷城も日本国内で複数の店舗を展開している。
近年のタピオカティーブームを土台に、新しい飲料や味への強い需要に加え、中国文化全般への関心の高まりを追い風としている。
消費者を引きつけているのは、喜茶で使用される中国から輸入した香水レモンや悸動のキンモクセイ茶など入手しにくい素材だ。写真・動画共有アプリ「インスタグラム」や中国系動画共有アプリ「TikTok」で映える鮮やかな色合いのドリンクも人気の理由となっている。
これらのティーチェーンが提供する飲み物は、伝統的な中国の茶館で親しまれてきたウーロン茶やジャスミン茶とは大きく異なる。
夫と共に喜茶の店舗を訪れていたアレクサ・ランティンさん(31)は、新しい味を求めていると話し、今は誰もがフィリピン原産の紫ヤムイモ「ウベ」を好んでいるようだと指摘。「人々はこうしたユニークな味を求めている」と語った。
夫のエイドリアン・アポロニオさんは、コーヒーチェーン大手よりも店の雰囲気が好みだという。コーヒーチェーンでは「仕事場代わりに利用している人が多い」が、喜茶では「友人同士で来る人が多く、おしゃべりをしながら長時間過ごしている」という。
各チェーンは果物を組み合わせたティードリンクに加え、ミルクベースの商品も展開している。多くの店舗では、チーズの泡をのせた冷たいチーズティーも販売している。蜜雪氷城はソフトクリームとの組み合わせを特徴とし、ブラウンシュガーパールサンデーやクラシックコーンなどを提供している。
喜茶の価格帯は、オリジナルのクラウドジャスミンティーが4ドル、クラウド抹茶ラテが約8ドル。一方、蜜雪氷城はレモネードが2ドル、マンゴー・ポメロ・タロイモ・フルーツティーが5ドルとなっている。
健康によいというお茶のイメージも、顧客を引きつける要因だ。スパーリングさんのパートナー、アレハンドロ・リオスさんは、喜茶の飲み物は米国の大手チェーンより健康的だと考えている。特に、大手チェーンのミックスドリンクに使われるシードオイルは、避けたいものの一つだという。
一方、添加物を含まないお茶は健康的とされるものの、ティーチェーンで販売される商品の多くは糖分やカロリーが高く、健康的なお茶とは言いにくい。
成長の勢いは速い。悸動はニューヨーク州内で10店舗近くまで拡大し、25州への進出を目指している。喜茶はニューヨーク州やカリフォルニア州などで40店舗超を展開する。世界で約5万店舗を持ち、昨年上場した蜜雪集団は現在、ニューヨーク州とカリフォルニア州にそれぞれ6店舗を構える。
悸動の共同創業者、アルビン・チャン氏は、より多くの消費者がカフェイン摂取源としてコーヒーからお茶へ切り替える中で、習慣そのものが変化していると指摘。従来、外食企業にとって売り上げが伸びにくい時間帯だった午後にお茶を飲む習慣を定着させる人も増えているという。
また、悸動のような中小企業は、大手チェーンよりも顧客の声を素早く商品に反映できるほか、タピオカやチーズの泡を組み合わせるといった新たなトレンドも迅速に取り入れられると話した。
消費支出の減速や人件費・原材料費の上昇で多くの飲食店が苦戦する一方、飲料カテゴリーは好調を維持している。調査会社サカーナのシニアバイスプレジデント、デービッド・ポータリン氏は、飲み物は支出を抑える消費者にとっても「許容できるぜいたく」であり続けていると述べた。
調査会社データセンシャルの市場調査担当者、フイ・ドー氏は、消費者は「10ドル未満の買い物について、気分転換になり日常を少しよくしてくれるものと捉えている」と話す。これは、高額な買い物は控える一方で、ちょっとしたぜいたくにはお金を使う消費行動によるものだという。また、飲料は食事に比べて衝動買いされることが多いため、価格への敏感さも比較的低いと指摘した。
ドー氏は「人はさまざまな理由をつけて自分の買い物を正当化している」と語った。
原題:Chinese Tea Chains Are Brewing a New US Obsession(抜粋)
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