米国では、楽しみのためにお金を使うことに、多くの人が後ろめたさを感じている。

米アライ・ファイナンシャルのリポートによると、米国の成人の約4分の3が、自分が楽しむためにお金を使い、貯蓄などの金銭的な目標に回さなかった場合に罪悪感を覚えることが分かった。

もっとも、実際にお金を使い過ぎているわけではない。家族や友人と過ごす時間、ペットや趣味、気分転換などの余暇にお金を使い過ぎていると答えた人は6%に過ぎなかった。7割近い回答者は適切な額を使っていると考えている。

ただ、インフレや住宅費の高騰、景気の先行き不透明感への不安が広がるなか、ささやかなぜいたくにもためらいがつきまとう。外食や週末旅行、新しい趣味への出費が十分に予算の範囲内に収まっても、そのお金を借金の返済や緊急時に備えた資金、老後の貯蓄に回すこともできる。米国の消費者心理は、将来に備えた貯蓄よりも楽しみや体験への支出を優先していた新型コロナ禍後の「YOLO(人生は一度きり)」型消費から大きく変化している。

アライでマネー・ウェルネス部門を率いるジャック・ハワード氏は、米消費者はお金を使うたびに、ほかの使い道を意識するようになっていると指摘した。その結果、「無理のない買い物でさえ、本当にこれにお金を使ってよかったのかと悩み、別のことに使うべきだったと罪悪感を抱くようになっている」と述べた。

今回の調査は、調査会社ユーガブが7月、家計の意思決定に何らかの形で関わっている米国の成人5000人超を対象に行った。

ペトラ・ブキャナンさん(53)は、お金を使うことに「病的なほど罪悪感を覚える」と自認する。もともと倹約家だが、最近はお金を使うことへの迷いがさらに強くなっているという。

ブキャナンさんは「保険料はこの3年で3倍になった。自動車保険料も上がり、食費も上がった。本当にひどい状況だ」と話す。そのため「お金の使い方には非常に気を付けるようになっているにもかかわらず、それでもぎりぎりだと感じることが多い」という。

ブキャナンさんは今年初め、カリフォルニア州メンドシノ郡にある自宅の敷地の草を食べさせ、除草する目的で、羊2頭を250ドル(約4万円)で購入した。羊はブキャナンさんに「大きな喜び」をもたらしただけでなく、エアビーアンドビーでの民泊事業の集客にも一役買っている。それでもブキャナンさんは、羊を買うべきだったのかどうかと悩むことがある。

ブキャナンさんは羊を飼うために「借金をしたわけではないが、その分を老後資金の口座にもっと回すこともできたのではないかと思う」と話す。「何もかも徹底的に切り詰めた生活を送るべきだと思うこともある」という。

こうした葛藤を抱えているのはブキャナンさんだけではない。アライの調査によると、回答者の約7割が、家計上の責任を果たしながら人生を楽しむことにストレスを感じていることが分かった。経済的な負担やほかに優先すべきことがあるため、楽しみにしていることを控えたり、先延ばししたり、諦めたりすることがあると回答した人の割合は77%に上った。同社のハワード氏によると、米消費者が消費を続けているからといって、お金を使うことへの不安を抱いていないわけではないという。

こうした葛藤は、米国人が今の生活を楽しむことと将来に備えることのどちらを優先するかにも表れている。回答者の54%は、長期的な金銭目標の達成が遅れても、将来への備えと今の楽しみを両立させようとしている。一方、27%は今の楽しみを犠牲にして将来への備えを優先している。長期的な目標よりも今の体験を優先している人は、わずか8%だった。

フロリダ州タンパに住むアレクサンダー・ウーさん(34)は、どちらかといえば将来に備えて貯蓄を優先するタイプだ。以前から倹約生活を続け、家計には余裕が出てきた。だが、食料品や光熱費、ガソリン代が上昇し、雇用情勢への不安もあるなか、なかなか財布のひもを緩められずにいるという。

ウーさんは「もっと気兼ねなくお金を使えるようになろうとしているが、経済情勢そのものによって、支出を正当化することが難しくなっている」と話す。

ダネット・バルガスさん(23)は、将来への備えを優先し、韓国の男性グループBTSとシンガーソングライターのノア・カーンのコンサートを見に行くのを諦めた。給与を確認し、航空運賃や宿泊費を計算した結果、その出費は正当化できないと判断した。コンサートのチケットは転売した。

サウスカロライナ州グリーンビルでフリーランスの写真家として働くバルガスさんは、ニューヨークやロサンゼルスなどの大都市への移住という長期的な目標に向けて貯蓄している。そのため、コーヒーや友人との高額な外食を控え、食料品の購入にはアルディ(Aldi)やコストコなど比較的安価な店舗を利用するように心がけている。

それでも、罪悪感によって米国人が完全に消費を止めているわけではない。アライのリポートによると、少なくとも月1回は自分が楽しむためにお金を使っているとの回答は全体の3分の2超に上った。一方で、そうした支出のためにあらかじめ予算を確保している人は39%にとどまった。

資産を蓄える時間が長かった高齢層ほど、こうした支出に十分な価値があると考える傾向が強く、ベビーブーマー世代とそれより上の世代では32%に上った。これに対し、ミレニアル世代は29%、X世代とZ世代はいずれも27%だった。

カーラ・マシューズさん(42)は、お金を使うことへの迷いを抑える方法を見つけた。夫婦それぞれが毎月150ドルを「楽しみのためのお金」として取り分けている。使い道をあらかじめ決めておくことで、ペディキュアやゴルフなどにもあまり迷わずお金を使えるようになったという。

マシューズさんは「将来に備えて今は我慢することと、YOLO的な考え方とのバランスを取ることが大切だ」と話した。

原題:Americans Say They Feel Guilty About Spending Money on Fun(抜粋)

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