カナダ・トロント株式市場が24日に取引を開始した直後、トランプ米大統領は、カナダの自動車セクターへの関税を倍増させるとSNSへの投稿で表明した。その後も、隣国カナダへの辛辣な発言を相次いで浴びせた。

ところが、カナダ株は売られるどころか、資金が途絶えることなく流入した。今年に入ってからずっと続く動きだ。

トランプ氏がカナダへの「口撃」を強める中でも、トランプ政権の政策が結果的にカナダ株を押し上げ、米国株を2年連続でアウトパフォームする原動力になっている。トランプ氏にとっては、なんとも皮肉な構図だ。

トロント市場に上場するカナダ株ETF(上場投資信託)で最大の「iシェアーズ・コアS&P/TSXキャップド・コンポジット・インデックスETF」には、24日も資金が流入。月間では、11カ月連続の流入超となる勢いだ。買い手はカナダ人に限らない。カナダ統計局によると、今年は外国からの同国証券への資金純流入が毎月続いている。

レイモンド・ジェームズのカナダ投資戦略責任者、ニール・リンズデル氏は、トランプ氏による関税の脅しについて「以前ほどの衝撃を市場に与えなくなっている」と話す。関税は長続きせず、全面的な対立激化に至る可能性も比較的低いとみて、S&P/TSX総合指数の年末目標を3万7000に据え置いている。

実際、トロントの金融街ベイストリートでは、ノバスコシア銀行やIGウェルス・マネジメントなどのストラテジストが、トランプ氏による新たな関税表明やカナダたたきを受けても、投資家に「冷静さを保つ」よう呼びかけている。

もっとも、投資家はそもそも動じていなかったようだ。トロント証券取引所の売買高は100日移動平均を下回った。

ファースト・アベニュー・インベストメント・カウンセルのブライアン・マッデン最高投資責任者(CIO)は「典型的な脅しとブラフの戦略で、これまでにも目にしてきた展開だ」と話す。通商協議の決裂は短期的にはカナダの投資家心理に影響を与え、貿易への依存度が高い業種を直撃するとみる。

一方で、トランプ政権の別の政策は、幅広いカナダ株に追い風になっているとマッデン氏は指摘する。イラン戦争に伴う原油高は、S&P/TSX総合指数で約17%を占めるエネルギー株を押し上げている。

もう一つの追い風が金価格の上昇だ。米政府債務の増加や、米財務省による金利抑制の取り組みを背景に金相場が上昇し、同指数の20%近くを占める素材株の支援材料となっている。

IGウェルス・マネジメントのチーフ投資ストラテジスト、フィリップ・ペタソン氏は「TSXは、トランプ政策にもかかわらず好調なのではなく、むしろトランプ政策のおかげで好調なのだ」と述べる。

こうした要因が重なり、カナダ株は2年連続でS&P500種株価指数のパフォーマンスを上回る勢いだ。2026年に入ってS&P/TSX総合指数は米ドルベースで16%上昇しているのに対し、S&P500種は12%高にとどまる。

S&P/TSX総合指数は25日に再び最高値を更新して終えた。2年連続でS&P500種を上回れば、世界的な金融危機からの回復局面だった2009-10年以来となる。

カナダ株指数で今年、最も好調なのはバード・コンストラクションで、株価は134%上昇している。背景には、トランプ氏の関税圧力に対するカナダ政府の対応がある。

カーニー首相は、カナダ経済の対米依存を減らすため、鉱山開発やパイプライン、港湾拡張など大型インフラ事業の加速を図っている。その恩恵は建設会社だけでなく、キャタピラー製品を扱うフィニング・インターナショナルなど産業機器販売会社にも及んでいる。

ブロンプトンのローラ・ラウ最高投資責任者(CIO)は「米国を安定した貿易相手として頼れない以上、こうした投資拡大の流れは続くだろう」と述べた。

一方、足元の値上がりを受け、一部では利益確定の動きも出ている。

ペンダーファンドのグレッグ・テイラー最高投資責任者(CIO)は、「例年9月は相場がやや不安定になりやすいため、ポートフォリオ全体をやや守り重視にしている。今はディフェンシブな姿勢を強める良い機会だ」と述べた。

それでも、相場が弱含んでも長続きしないとテイラー氏はみる。市場全体が下落し、カナダと米国の当局者が交渉の席に戻れば、手元資金を再び投じる考えだ。「年末にかけて、もう一段の上昇局面に入る可能性がある」という。

こうした見方は市場関係者の間で広く共有されている。

ファースト・アベニューのマッデン氏は「関税問題が解消すれば、一気に高揚感が広がり、市場は急騰するだろう」と話した。

原題:Trump’s Policies Find an Unlikely Beneficiary: Canadian Stocks(抜粋)

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