(ブルームバーグ):市場で9月利上げ観測が急速に高まる中、日本銀行当局者の発言に注目が集まっている。皮切りとなるのは、27日に予定される日銀の氷見野良三副総裁の講演だ。
9月17、18日両日に行われる次回金融政策決定会合を前に日銀幹部が公の場で発言する機会が相次ぐ。来週には、米国で開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議後に植田和男総裁が記者会見を行う見通し。
市場の金融政策見通しを反映する金利スワップ市場では、9月までの利上げ確率が21日時点で約82%に達した。7月会合直前の約23%から3倍超に上昇している。2024年7月末の利上げは市場への織り込みが十分ではなく、一部の参加者にとって予想外となり、市場の混乱を招いた。この決定を巡り強い批判を受けた植田総裁は、それ以降、市場との丁寧な対話を重視している。
円相場の動向も、日銀が政策の方向性を事前に市場に示す必要性を高めている。市場が利上げを織り込む中で政策を据え置けば、ポジション解消が相次ぎ、円相場が急落する恐れがある。
24年7月の利上げが世界的な株安を招く一因となった経験を踏まえ、日銀はその後の3回の利上げでは、事前に市場へ明確なシグナルを送ってきた。日銀ウオッチャーは、政策当局者が現在の市場の織り込みを容認しているのか、それとも行き過ぎとみてけん制しようとしているのか、手がかりを求めて発言を注視している。
大和証券の南健人シニアエコノミストは、「日銀が次の利上げを9月に行うとはっきり言うことはおそらくないだろう」と指摘。「物価の上振れリスクを強調することで早期利上げの必要性を示唆する可能性が高い。市場はそれを9月利上げのサインと受け止めるだろう」と述べた。
日米両国が先月、外国為替市場で異例の協調介入に踏み切ったことで、9月利上げ観測が急速に強まった。約40年ぶりの安値圏に下落した円相場は、協調介入を受けて一時円高が進んだものの、その後は押し戻され、心理的な節目である1ドル=160円をうかがう水準にとどまっている。日銀がハト派的な姿勢を示せば、再び円安が進む恐れがあり、緩和的なメッセージを発する余地は限られる。
不確実性や追加データを見極める必要性、過去の利上げの影響を繰り返し強調すれば、市場で高まる9月利上げ観測をけん制するシグナルと受け止められる可能性がある。
一方、物価の上振れリスクや円安による物価上昇圧力、政策対応が後手に回ることへの警戒をより強く打ち出せば、早期利上げ観測を一段と強める可能性が高い。
9月利上げの有無を探る上では、審議委員の発言も焦点となる。9月2日には高田創審議委員、同10日には増一行審議委員が講演する予定だ。
政策委員会で最もタカ派的とみられる高田氏は、先月の会合でただ1人利上げを提案しており、早期利上げの必要性を改めて示す可能性が高い。
増氏の6月会合前の発言がその後の利上げ観測を強めるきっかけとなったため、注目が集まる。増氏は5月の講演で景気下振れの兆しが明確にならなければ、できる限り早い段階での利上げが望ましいとの見解を示した。同氏の講演は、次回会合前に予定される審議委員の最後の公の場となる。
日銀ウオッチャーは、植田総裁と高市早苗首相が会談を行う可能性にも注目している。金融緩和を志向する高市氏の姿勢は、日銀が金融政策正常化を進める上で制約となる可能性がある。両氏はこれまで約3カ月に1回のペースで3回会談しており、直近は5月22日に会談した。
大和証券の南氏は、「次回の日銀会合までに両者が再び会談する可能性は十分ある」と指摘。「今回は高市首相も早期利上げを受け入れざるを得ないのではないか。日銀が利上げペースを速められるのか、市場がなお懐疑的にみている大きな理由の一つが高市首相だ」と述べた。
政府にとっても、日銀の追加利上げに反対するハードルは高まりつつある。日米両国は、日銀の7月会合後、1998年以来初めて協調介入に踏み切った。円相場の下支えを為替介入だけに頼るのではなく、金融政策でも対応すべきだとの圧力が強まる可能性がある。
ベッセント米財務長官は4日、米経済専門局CNBCに対し、為替介入に続いて金融政策面でも対応が必要になるとの認識を示し、そうした対応が取られることを「強く確信している」と述べた。ベッセント氏は、植田氏とは15年来の付き合いがあるとし、必要な対応を取ると信頼しているとも語った。
--取材協力:伊藤純夫.
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