産業間の二極化も深刻
産業間の二極化も深刻である。2025年の輸出全体は増加したものの、半導体や船舶などを除く多くの品目では、むしろ輸出が減少した。株式市場でも同様の現象がみられる。サムスン電子とSKハイニックスの2社だけで、2026年5月時点の時価総額に占める割合が55%を超えたとするデータは、韓国経済と資本市場がいかに特定の産業や企業に集中しているかを象徴的に示している。このような状況では、半導体景気が好調なときには韓国経済全体が非常に強く見える一方、半導体サイクルが反転した場合には、経済全体が同時に大きな打撃を受けるリスクも高まる。
半導体以外の企業が置かれている厳しい状況は、限界企業の増加からも確認できる。ここでいう限界企業とは、営業利益で利払い費用を十分に賄えない状態が3年以上続く企業をいう。韓国経済人協会が今年6月に発表した資料によると、韓国の上場企業に占める限界企業の割合は、2017年の11.8%から2025年には27.6%へと急増した。主要国の中で増加幅が最も大きく、水準そのものも米国の30.7%に次いで高い。これは、一部の半導体大企業が好況を享受する一方で、その陰では多くの企業の経営環境が悪化していることを意味する。
国民生活とより直接的に結びつく問題は、物価と為替である。特に韓国はエネルギーや原材料の輸入依存度が高いため、ウォン安が進行すると輸入物価が上昇し、それが再び生活物価を押し上げる要因となる。ウォン安の背景には、米韓の金利差、国内投資家による海外投資拡大に伴うドル需要、中東情勢などの地政学的リスクを背景とした原油・原材料価格の上昇、さらには円をはじめとするアジア通貨との連動など、さまざまな要因が作用している。
結局、現在の韓国経済の実態を一言で表すならば、「輸出は好調だが内需は厳しく、半導体は好況である一方、多くの企業や家計はその恩恵を実感できていない経済」といえる。問題の核心は単なる景気循環ではなく、半導体や一部の大企業に成長が集中し、その成果が中小・中堅企業、サービス業、雇用、家計所得へ十分に波及していない経済構造にある。
今後は、半導体に続く新たな成長産業の育成や中小企業の生産性向上、労働市場の格差縮小を進めるとともに、家計債務や住宅費負担を軽減し、消費余力を高める必要がある。輸出主導の景気回復を持続可能な成長へとつなげるためには、その成果が投資、雇用、賃金、家計所得を通じて国民の暮らしにまで広く波及する仕組みを構築することが重要である。
(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中)