残された根本的課題とアジア全域に広がる若者の危機

しかし残念ながら、大臣を辞任させても、AIでさらに悪化する若者の雇用危機など、インドが抱える根本的な問題は解決しません。統計によれば、インドの大学を卒業した若者100人のうち、何らかの形で就職したのは50人。自営業や日雇いではなく正社員として働いているのは26人。さらにその中で、雇用契約や有給、社会保障があるのはわずか4人にすぎません。

大勢の人々が限界を迎えており、就職できずに不安定な単発仕事で食いつなぐ大卒者も多数存在します。彼らは1日に8〜10時間働きながら、日給は500〜700ルピー(約5〜8ドル)にとどまっています。

単に仕事が足りないだけでなく、2012年にピークを迎えて以降、大卒男性の平均月収は下がり続けるなど、賃金が上がる見込みがないことも問題です。大卒女性の賃金は徐々に差を埋めてきてはいますが、全体として賃金が伸び悩んでいるのが現実です。

親世代が進んだ「良い仕事に就き、中流階級に入り、家を買って生涯暮らす」という選択肢は、もはや存在しないと彼らは感じています。

仕事や暮らしのあらゆる面で機会を奪われたという怒りは、インドの若者だけのものではありません。ネパール、バングラデシュ、インドネシアに至るまで、格差や汚職、深刻な失業問題への怒りが拍車をかけ、若者主導の抗議活動がアジア全域の政府を揺るがしています。

来年、モディ首相の与党はインドで最も人口の多いウッタルプラデーシュ州で重要な選挙を迎えますが、そこでも若者の失業は大きな問題となります。インドが2047年までに先進国となるためには、今後25年間、8〜9%の経済成長を継続し、働き手に見合う十分な雇用を創出した上で、給料も引き上げていく必要があります。

インドを知らない人には信じがたいような、汚職や政治家の無関心がはびこる環境の中で、「ゴキブリ現象」は厳しい現実と戦い生き抜こうとする人々の「生き残り」の象徴となりました。大きな選挙が迫る中、モディ首相が戦っているのは政治的なライバルだけではありません。6本足のマスコットの旗を掲げ、インドの現状を脅かす若き勢力と戦っているのです。