高市首相が消費減税について自民党の意見を集約する目的はリスク回避

共同通信は7月26日、「減税可否、自民で集約案 首相、執行部に週内指示も 責任共有狙い、慎重派配慮」との記事を配信し、「高市早苗首相が、飲食料品の消費税減税の可否や内容を最終判断する前に、週内にも自民党執行部に党内の意見集約を指示する案が浮上していることが分かった。関係者が26日明らかにした」と報じた。超党派の社会保障国民会議では消費税率の引き下げに関する結論が出ず、「判断を委ねられる形の首相は意思決定に当たり、減税慎重派に配慮しながら、政府と党で責任を共有する狙いがある」という。

高市首相の狙いは、①消費税率の引き下げを断念する場合に自民党内の反発を理由にすること、②消費税率の引き下げの決断をする場合に市場が荒れることがあれば(いわゆるトラスショック的な動き)、その責任をすべて負わないようにすること、などだろう。後述するように、現在は「消費税率の引き下げリスク」を、自民党と高市首相が押し付け合っている状況にある模様である。

高市首相にとっては、自身の判断で消費税率の引き下げを主導していけば、支持率の回復が見込まれる。しかし、金融市場で「消費減税ショック」が生じることになれば、高市首相の責任問題となりかねない。「政府と党で責任を共有する」ことが得策だと考えたのだろう。

政治ジャーナリストの泉宏氏は東洋経済オンラインのコラムで、自民党内では「財源不明の減税断行などが『トリプル安』を招くような事態となれば、内閣支持率はさらに下落し、高市政権の『終わりの始まり』となる」(閣僚経験者)との見方が急浮上していると分析していた。そもそも、「自民党議員は現状でも“反高市感情”の持ち主が多数派」(自民党長老)という見方が多いとし、政界関係者の間では「自民党が高市首相との“無理心中”を避けるため、すべての責任を高市氏に背負わせて退陣に追い込むとの“陰謀”が台頭している」との声も出始めているという。高市首相が自民党の意見を集約する指示を出すとすれば、この「無理心中」のシナリオを回避することが目的だろう。

現時点では、消費税率の引き下げの実現可能性は五分五分の状況である。筆者は引き下げが見送られる可能性の方がわずかに高くなってきたとみているが、高市首相の判断次第であるため、予想は難しい。しかし、(1)高市首相が自民党内の意見に配慮せざるを得ない状況になっていること、(2)高市首相は金融市場の変動を気にしている可能性が高いことは重要だろう。消費税率の引き下げの判断を予想することは困難であり、短期的には「警戒」(市場がどのような動きになるかを予想することは困難)が必要だが、中長期的には「楽観」(財政リスクは高まりにくい)と、筆者は判断している。

(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)