人口減少下のエリア人口の考え方
1|20代人口流出は人口サステナ的には「合理的判断」
最後に、令和7年国勢調査で人口数が国民の1%未満となったエリアが17エリア、36%に達していることについて、データからだけでは読み取れない補足情報を含めて解説しておきたい。

今年2月に公開したレポート【国内人口移動データ報】2025年20代人口社会減 都道府県ワーストランキングでは、2024年20代推定人口に対して、2025年に社会減(転出超過)した20代人口の割合が高いエリアをランキング形式で紹介した。

男女合計で、3%以上の20代流出率となったエリアは14県であった。この14県のうち、愛媛県、山口県、福島県、長崎県、奈良県の5県が人口1%以上2%未満のエリア、残る9県の山形県、秋田県、福井県、高知県、鳥取県、青森県、徳島県、和歌山県、岩手県が人口1%未満のエリアとなっており、人口動態的にみて家族形成(次世代人口生産)のパワー源となる20代人口が、同世代人口がより多く集まる場所へと、人口超少数派のエリアから移動している様子が首都圏一極集中であるともいえる。
より多くの同世代人口が集まるエリアに、20代人口が特に20代前半の未婚期に大移動している状態が首都圏一極集中の統計的な実態である、と考えると、人口サステナビリティを望むのであれば、20代人口の首都圏一極集中は、むしろ日本人の「生き残り戦略」の現れである、という風にとらえるべきなのかもしれない。
全国に散らばる数少ない20代人口は、その地元に残る限り、限られたエリア内の限られた中でしか家族形成相手を見つけられなくなっているし、人口減少下でのこの状態は、悪化こそすれ改善の見込みが今のところはない。このような全国に散在する子ども・若者の状態も、日本の少子化の主因である未婚化を加速させているのではないかという視点をもつことは非常に重要である。
2|日本と同面積の海外エリアとの比較から見えてくること
日本は38万平方キロメートルの国土を持ち、これはアメリカ合衆国のカリフォルニア州の42万平方キロメートルよりやや小さい規模となっている。カリフォルニア州は4000万人程度の人口で、それに対して日本はいまだ3倍弱の人口が存在する。これまで狭い国土に大量の人口が存在してきた歴史の中では、過密化問題からある程度の人口の分散も必要であったが、年間270万人出生していた第2次世界大戦後の人口最大派閥の団塊世代(2026年77歳~79歳)が男性を中心に大量死の段階に入った今、あえて狭い国土の中で前例主義的に国民を国内に散在させる意味が、(過密回避の視点からは)加速度的になくなっている。
またノルウェーも国土が37万平方キロメートルで、日本に類似した面積の国である。
そこに600万未満の人口(兵庫県の人口程度)が居住しており、広々とした国土に散らばっているかというと、そうではない。ノルウェーは国土の半分程度が森林限界(木も生えない過酷な環境)となっていて、国土の南半分に人口が集中している。
首都のオスロには70万人以上が居住しており、総人口の約13%を占めている。もっというと、オスロから100キロ圏内に人口の半分が居住しているのだが、だからといって「オスロ一極集中」などという騒ぎは聞いたことがない。
彼らの暮らし方は、「自然条件等を鑑みて、住みやすいところに住んでいる」という状態ともいえる。
日本はノルウェーのような森林限界こそないものの、中山間地域が国土の6割を超えており、決して自然環境的に住みやすい場所が国土の大半を占めるといった状態ではない。
若年人口割合の低下で税源(財源)が限られる中、特に人口サステナビリティの観点にたつのであれば、家族形成の可能性を少しでも高めるために、こども・若者人口の点在化・孤立状態を可能な限り阻止しなければならない段階にある。
特に「こども真ん中」というのであれば、「そのエリアに生まれる子どもの教育環境やスポーツ等の趣味追及の機会均等化」「いじめ発生リスクの軽減」
(子どもが少数になるほど、いじめが苛烈になる、逃げ場がない、友達ができないなどといった状態が発生しやすい)「若者の家族形成の機会均等」
を考え、前例主義や既得権益に立脚した「エリア区分前例主義」は、早急に見直すべきであると考えている。
(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子 )