デジタル化が解決策にならない可能性

足もとで実施されている2026年プレミアム付商品券事業についても確認する。内閣府「令和8年度実施計画一覧」によれば、費用を確認できた98自治体の事務費割合は平均で17.4%であった。これは、5,000円分のプレミアムを届けるのに約1,050円の事務費がかかっていることを意味する。2019年からは大きく改善したが、予算の相当部分がなお事務費に充てられている。実際、事務費割合が20%を超えるのは33自治体、30%を超えるのは10自治体にのぼり、自治体間のばらつきは大きい。

また、商品券のデジタル化が必ずしも低コスト化につながるとは限らない。費用を確認できた自治体をみる限り、デジタル商品券を採用した事業の事務費割合は、紙の商品券による事業と比べて低いとは言えなかった。例えば、紙の商品券を採用する静岡県磐田市の事務費割合が16.7%であるのに対して、デジタル商品券を導入している岩手県一関市では26.2%となっている。デジタル商品券では印刷費や換金作業の一部を省略できる一方、システム構築費などの新たな費用が生じるためと考えられる。

そもそも、国が示す推奨事業メニュー(食料品の物価高騰に対する支援)には、プレミアム付商品券のほか、電子クーポンや地域ポイント、食料品の現物給付などが挙げられている。プレミアム付商品券はあくまで選択肢の一つであり、最も効率的な手法とは限らない。その意味で、物価高対策において重要なのは、予算のうちどれだけが実際に生活者支援に回っているかという視点であろう。

おわりに

以上を踏まえると、自治体がプレミアム付商品券を活用する際には、プレミアム率の大きさだけでなく、「プレミアム分を届けるのにいくら費用がかかっているのか」という費用対効果の視点が欠かせない。2019年の全国事業では、5,000円分のプレミアムを届けるのに約6,700円の事務費がかかっていた。足もとの事例では、これが1,000円程度まで下がったものの、自治体間のばらつきは大きく、一定の事務費が生じる構造そのものは変わっていない。

自治体には、「何を配るか」だけでなく、「最小限の事務コストで、予算のうちできるだけ多くを生活者支援に回せる手法は何か」という視点から支援策を選択することが求められよう。

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員 佐藤 雅之 )