(ブルームバーグ):ソフトバンクグループによる400億ドル(約6兆5000億円)の米OpenAI向けブリッジローンは、ウォール街に巨額の手数料収入をもたらす見通しだ。銀行は巨額報酬と引き換えに、多額の負債を抱えるソフトバンクGと、収益性がなお見通せないAI分野を巡るリスクも引き受けることになる。
事情に詳しい複数の関係者によると、OpenAIへの追加出資資金を調達する400億ドルのブリッジローンで主幹事を務めるJPモルガン・チェースやゴールドマン・サックス・グループなどは、この案件で1億ドルを超える手数料収入を得る見込みだ。この手数料収入は、スペースXの大型IPOで主幹事行が得た報酬に匹敵する規模で、その他の参加行もそれぞれ2500万-7000万ドル程度の収益を期待しているという。このブリッジローンは3月に契約され、シンジケーション(融資団の組成)は完了に近づいているという。
世界的なAI投資ブームが続く中、この大型融資案件は銀行業界が直面するジレンマを映し出す。巨額の手数料や将来の取引機会が見込める一方、投機的等級にとどまるソフトバンクG向けの与信を積み増し、収益化の道筋がなお見えにくいAI投資を巡るリスクも引き受けることになるためだ。
りそなホールディングスの武居大暉ストラテジストは、「ブリッジローンを提供するという判断には、FOMO(取り残されることへの恐怖)が強く働いている」と指摘。「この案件を断るという選択肢は、商業銀行にとって現実的ではない」と話す。
ソフトバンクGは、案件不足に苦しむアジアの融資市場にとって貴重な大型案件となっている。ブルームバーグ集計によると、日本を除くアジア太平洋地域のドル・ユーロ・円建てシンジケートローンは、6月までの半年間で総額690億ドルと16年ぶりの低水準に落ち込んだ。
関係者によると、ある銀行ではこの案件だけでアジア太平洋事業の年間収益の約8%を稼ぐ見込み。別の銀行では担当部門の年間予算の15倍に相当する収益が期待されているという。案件を主導した幹部らは、高額ボーナスも視野に入れている。
ゴールドマンとソフトバンクGの広報担当者はコメントを控えた。JPモルガンにもコメントを求めたが、現時点で回答は得られていない。
膨らむ信用リスク
一方、AI投資への巨額資金供給を巡るリスクも意識され始めている。
国際決済銀行(BIS)は6月公表の年次報告書で、AIバブルの崩壊を世界経済に対する重大なリスクの一つと位置付けた。AI関連のサプライチェーンに属する企業への資金供給が急速に細り、債務返済に苦しむ恐れがあると警告した。
孫正義会長兼社長はOpenAIに「全力投球」する方針を掲げ、OpenAIへの投資コミットメントは600億ドルを超えた。この巨額投資に社内からも懸念の声が出ていた。
関係者によると、一部の銀行担当者は「銀行は実質的に、ソフトバンクGによるOpenAIへの賭けに融資している」と懸念していた。しかし、こうした慎重論は、大型案件を逃したくない経営陣によって退けられることも少なくなかったという。一方で、融資はソフトバンクG本体の信用力を裏付けとし、詳細な返済計画も盛り込まれているため、リスクは一定程度抑えられているとの見方もある。
将来案件への布石
銀行が積極姿勢を示す背景には、手数料だけではない狙いもある。
ベンチャー投資会社メンロパーク・キャピタルの共同創業者、ハビブ・イマム氏は、オープンAIが将来的に新規株式公開(IPO)を実施する可能性や、ソフトバンクG関連の資金調達案件が今後も続くことを挙げ、「重要なのは関係構築だ。銀行はソフトバンクGやOpenAIの近くにいることで、IPOや社債、マージンローン(証券担保ローン)、合併・買収(M&A)アドバイザリーなど将来の案件につなげたいと考えている」と話す。
OpenAIは早ければ27年にもIPOを実施する可能性があるが、従来想定より遅れる見通し。IPOが遅れればソフトバンクGの投資回収も後ずれするため、市場関係者はその時期を注視している。
もっとも、銀行がリスクを軽視しているわけではない。ソフトバンクGは今年、OpenAI株式のみを担保とする100億ドル規模の融資を検討したが、その後60億ドルへ縮小された上で交渉は停滞した。一部銀行が、担保価値の評価に慎重姿勢を示したためだという。
与信集中
ブルームバーグ集計によると、ソフトバンクGは現在、融資や社債を合わせ約1220億ドル規模の有利子負債を抱える。今年4月には36億ドルをドル建てとユーロ建て社債で調達した。
関係者によると、一部の中堅銀行では今回の融資参加により、単一企業向け融資の上限に近づきつつある。さらにソフトバンクGはフランスで最大750億ユーロ(約14兆円)を投じるAIデータセンター計画も掲げており、銀行側は今後も追加の資金需要に対応を迫られる可能性がある。
りそなHDの武居氏は「銀行はソフトバンクG向け与信を積み増すほど、この関係から抜け出しにくくなる」と指摘する。
アライアンス・バーンスタインのアジア・クレジット調査責任者、フア・チェン氏は「AI市場がどう展開するかは不透明だが、ソフトバンクGはそのエコシステムの中心に位置している。AI市場の動向は同社の信用力に直接影響する」と話し、「クレジット投資家にとっては、その動向を見極めることが重要になる」と述べた。
--取材協力:Finbarr Flynn.
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