(ブルームバーグ):米国とイランの戦闘が激化する中、湾岸アラブ諸国の米国の同盟国では、自らの安全保障と経済が脅かされていることへのいら立ちが強まっている。そうした不満は、今後の米国の対応をめぐり各国の見解が分かれていることにも表れている。
事情に詳しい複数の関係者によると、一部当局者は、トランプ米大統領がイラン国内に地上部隊を投入し、さらには主要原油輸出拠点であるカーグ島を制圧することも含め、軍事作戦を拡大すべきだと考えている。同関係者は非公表情報だとして匿名を条件に語った。
関係者によると、こうした当局者は、米国がより強硬な措置を講じない限り、イラン指導部はホルムズ海峡の支配を手放さず、譲歩することもないとみている。また別のシナリオとしては、小規模な戦闘が何カ月も続く、長期戦が想定される。これにより、海外からの投資や観光客を地域から遠ざけることになると、関係者の1人は述べた。
トランプ政権1期目で中東担当外交官を務め、現在はワシントン近東政策研究所のフェローを務めるデービッド・シェンカー氏は、「多くの当局者は『緊張を緩和するには、まず緊張を高める必要がある』と考えている」と指摘。「ホルムズ海峡をめぐる問題でも核問題でも、現在の状況ではイランからいかなる譲歩も引き出せない。さらなる対応が必要だ」と述べた。
ホワイトハウスと国務省はコメント要請に直ちには応じなかった。
一方、関係者によると、今回の紛争で主要な仲介役を担うパキスタンやカタールなどの国はこれに反対し、即時の緊張緩和を求めている。米国とイスラエルがイランの都市への空爆を続け、イランが湾岸全域に数千機のドローンとミサイルを発射していた3月から4月上旬の戦闘への再燃を防ぎたいとの狙いがある。
こうした状況は、6月中旬に米国とイランが暫定合意に達するまでの数週間とは対照的だ。当時、湾岸アラブ諸国はトランプ大統領に外交による緊張緩和を促す点でおおむね足並みをそろえていた。しかし、この2週間で戦闘が激化し、米国とイランが交わした覚書(MOU)の破綻について双方が相手側を非難する中で、その結束は崩れた。
クウェートやバーレーン、ヨルダンはイランによる激しい攻撃を受けている。
米国に対する疑念
今回の戦争は、開戦を望まなかった湾岸協力会議(GCC)加盟国に、米国が同盟国を守る能力への疑念を抱かせる結果となった。事情に詳しい関係者によると、一部の国は欧州諸国との防衛協力を一段と深めることを検討している。
ただ、トランプ大統領にも容易な選択肢はない。地上部隊の投入やカーグ島の制圧に踏み切れば、イランによる報復攻撃の激化や原油価格の一段高を招く可能性があるほか、多数の米兵が危険にさらされる恐れもある。
また、匿名を条件に語った別の関係者によると、多くの湾岸諸国当局者はホルムズ海峡の通航が近く完全に正常化するとはみておらず、地域の不透明感は当面続くとの見方が広がっている。
サウジアラビア駐在米大使を務めたマイケル・ラトニー氏は、「人々はいら立ち、怒っている」と指摘。「ただ、公の場では多くを語らない。誰もがトランプ氏との関係維持に努めているからだ。原油輸送を正常化し、経済を元の状態に戻したいと考えている。現在の状況は彼らにとって神経をすり減らすものだ」と述べた。
モジタバ師、関与強める
イランはホルムズ海峡の支配を維持する姿勢を崩していない。仲介国は暫定和平合意の再建を目指しており、イランのモメニ内相は21日、パキスタンのシャリフ首相と打開策を協議するため同国を訪れた。
イランのペゼシュキアン大統領は、最高指導者モジタバ・ハメネイ師について、政府戦略の策定への関与を強めているとの認識を示した。同師は就任後、これまで公の場に姿を見せていない。
イランのタスニム通信によると、ペゼシュキアン大統領は、自身はモジタバ・ハメネイ師に「これまで以上に直接接することができるようになった」と述べるとともに、政府のあらゆる行動は最高指導者の指導に基づいていると説明した。大統領は21日の行事で、イランの政策は今後も同師の指導の下で継続されると語った。
原題:Supreme Leader More Involved in Iran’s Strategy, President Says
US Allies in Persian Gulf Exasperated as Iran War Escalates
(抜粋)
--取材協力:Andrea Palasciano.
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