(ブルームバーグ):21日のニューヨーク外国為替市場では、円が対ドルで163円台に下落し、1986年12月以来の安値に下げた。中東情勢の悪化懸念に伴う原油高を背景に米金利が上昇し、ドル買い・円売りが優勢となった。
円は7月1日につけたそれまでの約40年ぶり安値である、1ドル=162円84銭からさらに水準を切り下げ、一時0.5%安の163円24銭まで売られた。
米国とイランは攻撃の応酬を続けており、トランプ米大統領はこの日、イランとの早期協議に慎重な姿勢を示した。ホルムズ海峡や紅海での緊張の高まりを受け、原油は3日続伸。米10・30年債利回りが2カ月ぶりの高水準をつける中、ドルが幅広い通貨に対して買われた。
三菱UFJ信託銀行ニューヨーク支店資金証券室の横田裕矢シニアバイスプレジデントは、中東情勢の緊迫化を背景とした原油価格の上昇はドル高につながりやすいほか、インフレ懸念から米金利も上昇し、ドル・円はストップロスを巻き込む形で163円台まで上昇したと述べた。
当局の介入警戒については、「ここから勢いが出て一気に164円に向かうといった動きが出てくれば、現実味が出てくるだろう」とした上で、「ドル・円のボラティリティーは1カ月で見ても1週間で見ても、かなり低位にとどまる」と指摘。介入を正当化するには、ドル・円相場に大きな変動が起きているとか、ファンダメンタルズに沿っていないといった理由が必要との認識を示した。
その上で、7月末の日銀会合で為替に対する言及があるかどうかに注目したいとし、「何もなければ、円安が止まらないことにもなりかねない」と述べた。

ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時0.2%近く上昇。米国時間に入り、ほぼ一貫して上値を伸ばす展開となった。
アレックス・コーエン氏、山田修輔氏、マーカス・ボーマン氏らバンク・オブ・アメリカのストラテジストは、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を巡る不透明感の高まりを受けて、カナダ・ドル/円のショートを推奨した。
トランプ氏がカナダ製品の一部に新たに50%の関税を課す方針を示したことで、「USMCAを巡る不透明感が増した」と、21日付リポートで指摘。一方で、日本当局による為替介入リスクが円の下値を支えるとして、「カナダ・ドル/円のスポット取引で1カナダ・ドル=115円65銭でショートポジションを構築する。ターゲットは112円、ストップロスは118円90銭とする」と述べた。
また「為替介入は、当面の円安進行を食い止める短期的な下支え要因となる可能性が高い」と指摘。「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国内資産への配分を増やす可能性についても、投資家は注意を払うべきだ」と述べた。
株式
米株式市場では押し目買いが入り、主要3株価指数がそろって上昇。AIトレードにはなお上値余地があるとの見方から、半導体株が買われ、相場をけん引した。
前週末に弱気相場入りしていたフィラデルフィア半導体株指数は5.2%上昇した。 エヌビディアは最先端AIサーバー「ベラ・ルービン」が主要顧客に納入されており、近く実際の運用が始まる見通しを明らかにした。人員削減を発表したインテルは値上がり。ナスダック100指数は1.9%上昇した。
UBSのトレーディングデスクによると、モメンタム株の下げが終わりに近づくにつれ、半導体株を積み増す好機が訪れる可能性がある。
半導体株が下げ止まりつつある理由の一つには、投機的なポジションの大半がすでに解消されたことがある。UBSのプライムブローカレッジ部門のデータによると、ヘッジファンドはモメンタム株と半導体株のロングポジションをグロスエクスポージャーの約5%相当縮小した。これは過去最大級の削減規模だ。
LPLフィナンシャルのアダム・ターンキスト氏は「今回の調整は、AI投資というテーマが根本的に崩れたというより、これまでの急騰を受けた健全なリセットとみる方が適切だ」と述べた。

それでも、データセンター開発に投じられている巨額投資への懐疑的な見方は根強く、今後発表されるテック企業の決算には厳しい視線が注がれそうだ。巨大テック7社で構成する「マグニフィセント・セブン」の先陣を切って、22日にはテスラとアルファベットが決算を発表する。翌週にはマイクロソフト、メタ・プラットフォームズ、アップル、アマゾン・ドット・コムが続く。
今回の決算シーズンはテック企業にとどまらず、企業収益の行方を占う重要な局面となるだろう。eToroのブレット・ケンウェル氏によると、ウォール街の高い期待を上回れない企業には、市場から厳しい評価が下る見通しだ。
「市場が企業に求める条件は厳しくなった。企業が不透明な環境を乗り切れるかどうかではなく、高いバリュエーションを正当化できるだけの成長と業績見通しを示せるかどうかが問われている」と、同氏は話した。
これまでのところ、決算シーズンは全般的に堅調な滑り出しとなっている。ブルームバーグがまとめたデータによると、これまでに決算を発表したS&P500種構成企業の90%超が市場予想を上回る利益となった。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのマーク・ヘーフェル氏は、「力強い利益の伸びを背景に、世界の株式市場には一段高の余地があるとみている」と指摘。一方で、「個別銘柄のパフォーマンス格差は大きく、地政学やインフレを巡るリスクも続いているため、投資家は十分に分散されたエクスポージャーを確保すべきだ」と述べた。
国債
米国債相場は下落し、10年債と30年債の利回りは約2カ月ぶりの高水準を付けた。原油価格の上昇を受けてインフレ圧力への懸念が強まり、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに踏み切るとの見方が広がった。
RBCキャピタル・マーケッツの金利ストラテジスト、アイザック・ブルック氏は「この日の値動きは総じて、エネルギー価格が一段高の展開となっていることを反映したものだ」と指摘。「2年債利回りの4.20%、10年債利回りの4.60%という、テクニカル上の重要な節目を再び上回ったことに加え、夏場特有の薄商いも金利上昇に拍車をかけた」と述べた。

金利先物市場では、FRBが7月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で政策金利を引き上げる確率を約20%と織り込んでいる。今月初めに付けた約50%からは低下したものの、利上げがなお選択肢だと市場がみていることを示している。
今月発表されたインフレ統計が相次ぎ予想を下回ったことで、国債相場は上昇していたが、このところの売りで上げを失った。
ナティクシスのチーフ米国エコノミスト、クリストファー・ホッジ氏は「エネルギー価格は変動が激しく、FRBは予想される総合CPI(消費者物価指数)の変動だけでなく、実際のデータを重視して意思決定を行うはずだ」と指摘。「もっとも、新議長の下でFRBがどのような判断を示すかは依然として不透明だ」と述べた。
原油
原油相場は3日続伸。北海ブレント原油は一時、1バレル=92ドルに近づく場面もあった。ホルムズ海峡や紅海の海上交通に対する脅威に加え、ロシア沿岸にあるカザフスタン産原油の主要輸出ターミナルを巡るリスクも材料視された。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物9月限は、前日比1.86ドル(2.3%)高の84.34ドルで終了。8月限はこの日が最終取引日だった。北海ブレント先物9月限は1.79ドル(2%)高の91.01ドルで引けた。
トランプ米大統領は、過去数日で米兵3人が死亡したことを受け、イランは「報いを受けることになる」と警告。その後、米軍はイランの標的を攻撃した。イランへの攻撃は10日連続となる。イランもホルムズ海峡内でタンカーへの攻撃を続けている。
一方でサウジアラビアがホルムズ海峡を迂回(うかい)して原油を輸出するルートである紅海に対し、イエメンのフーシ派は海上交通を封鎖すると警告した。サウジ産原油を中国向けに輸送していた超大型原油タンカー1隻が、紅海でUターンしたこともすでに確認された。
TP ICAPグループのエネルギー専門家、スコット・シェルトン氏は、緊張状態がさらに数週間続けば、北海ブレントは1バレル=100ドルを上回る可能性が高いとの見方を示した。
米ゴールドマン・サックス・グループは、ホルムズ海峡の混乱が続けば、北海ブレント原油価格が10-12月(第4四半期)までに1バレル=120ドルを超える可能性があるとの見方を示した。ただ、これは同行の基本シナリオではない。中東情勢が緩和に向かうことを前提に80ドルと予想している。フーシ派による脅威は、その予想の上振れリスクとなっている。
中東以外でも供給に混乱が広がっている。ロシアの黒海沿岸にあるターミナルでは、一連の攻撃で輸送に支障が生じた。同ターミナルは、世界有数の原油輸出国であるカザフスタン産原油の大半を積み出している。ウクライナは一連の攻撃への直接の関与は認めていない。
金
金相場は押し目買いが入り反発した。金スポットは一時2%近く上昇し、1オンス=4080ドル台を回復した。
市場では、中東情勢の緊迫化を受けたエネルギー価格の上昇でインフレが再燃し、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めを強いられる可能性が意識されている。金相場はこれまで2週連続で下落していた。

米国とイランの攻撃の応酬が10日連続となる一方、仲介国は停戦合意の再開を模索している。
米国とイランの戦争は、金と銀の数年にわたる強気相場に終止符を打つきっかけとなった。金は1月に付けた1オンス=5600ドル近い最高値から25%余り下落し、銀も一時120ドルを超えた高値から半値を割り込んだ。
ストーンXファイナンシャルの市場分析責任者、ローナ・オコンネル氏は、「18日間にわたる横ばい相場を経て、新たな買いが入った可能性は極めて高い」と指摘した。一方で、金相場については「テクニカル面では極めて弱気の形状となっている」とし、相場が上放れるようなら意外だとの見方を示した。
金スポットはニューヨーク時間午後2時26分現在、前日比78.10ドル(1.95%)高の1オンス=4086.13ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は60.50ドル(1.5%)高の4076.40ドルで引けた。
欧州
21日の欧州債市場では、英国債がこの日も苦戦した。利回りは一時2カ月ぶりの高水準に上昇したが、その後低下し、ほぼ変わらずで終了した。バーナム新首相に対する歓迎ムードはない。同首相が就任した前日の英国債は売りが広がった。
英財務相という重要ポストに起用された元国防相のジョン・ヒーリー氏は、比較的堅実な人選と受け止められた。一方で投資家は、バーナム氏が公約した生活費負担を軽減するための財源確保について懐疑的な見方を示している。
欧州株は反発。米・イラン衝突に関するニュースが続いているが、テクノロジー株の上昇や良好な企業決算が相場を支えた。
ストックス欧州600指数は0.6%高。パーソナルケア、メディア関連株は売られた。テクノロジー株は、最近の下落で割安となった銘柄に買いが入った。市場参加者は、今後発表される企業決算が、AIへの巨額投資の成果を示すかどうかに注目している。
オランダの半導体製造装置メーカー、ASMLホールディングは4.8%高。業種別株価指数でテクノロジー株は2.1%上昇した。基礎資源株も高い。
7月21日の欧州マーケット概観(表はロンドン午後6時現在)
原題:Stocks Climb as Rebound in Chipmakers Gathers Pace: Markets Wrap(抜粋)
Dollar Edges Higher; Yen Returns to Four-Decade Lows: Inside G10
BofA Recommends Short CAD/JPY Over Canada Trade Uncertainty
US Yields Hit Two-Month High as Oil Sparks Inflation Risk (1)
Oil Climbs as Traders Weigh Slew of Risks From Hormuz to Red Sea
Gold and Silver Rise on Dip-Buying as Traders Weigh Fed Strategy
European Stocks Rise as Tech and Earnings Counter Iran Concerns
UK Yields Stall Near Two-Month High in Warning for Burnham
トロント 塩原るみ rshiohara@bloomberg.netニューヨーク 清水石珠実 tshimizuishi@bloomberg.netニューヨーク 西前明子 anishimae3@bloomberg.netもっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.