(ブルームバーグ):原案から二転三転した骨太の方針は21日に閣議決定され、表記を巡る騒動が決着した。当初の記述が円安や金利上昇を招き、市場の洗礼を浴びて相次ぐ修正を迫られた高市早苗政権にとっては、市場との対話力が課題として残った。
市場の動揺の引き金になった「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案が公表されたのは6月30日。政府が目指す強い経済の実現に向けて「適切な金融政策運営が行われることも非常に重要」とし、日本銀行に政府との緊密な連携を求める内容だった。
ところが、こうした表現が日銀への利上げけん制と受け止められた。「財政健全化」の文言が削除されたことと相まって、財政拡張や物価高騰への懸念が高まり、市場では「骨太ショック」とも呼ばれた。
骨太の方針を所管する城内実経済財政担当相は7月7日、市場での受け止めは文書の趣旨と異なり「誤解だ」と強調した。だが、その後も市場の不安は収まらず、債券市場では9日に長期金利が一時2.9%を付け、約30年ぶりの高水準に達した。

城内氏は「原案の変更は考えていない」と一度は発言したものの、結果的に金融政策の部分の記述が2度にわたり修正された。
閣議決定された文書では、注釈に「日本銀行法第3条(日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない)に基づき、金融政策の具体的な手法については日本銀行に委ねられる」が追加された。政府は、昨年の文書にはなかった「日銀の自主性」を明記することで、事態の沈静化を図った。
21日の会見で城内氏は、金融政策の具体的手法は日銀に委ねられるべきであり、「そうした政府の立場に変わりはない」と説明した。
今回の紆余(うよ)曲折の背景には、高市政権の「対話力不足」がある。市場で金利上昇や円安への警戒が続く中、金融緩和や拡張財政を想起させる材料を与えたことで動揺を増幅させた。「責任ある積極財政」を掲げながら市場とどう向き合っていくのかが、今後の高市政権に問われる。
みずほ証券の松尾勇佑シニアマーケットエコノミストは、高市政権の財政運営が注目される中で「骨太方針は材料視されやすく、タイミングの悪さはあっただろう」と指摘。今後「消費減税の財源などが具体化する過程で、財政拡張が意識される局面が訪れる可能性もある」とし、政権の対話力が試されるだろうとの見方を示した。

財政運営
財政目標は、従来の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)から債務残高対国内総生産(GDP)比に軸足を移す。PBは単年度の黒字化時期を機械的に追うのではなく、債務対GDP比の低下と整合させるよう「複数年で管理する」と明記した。
2029年4月に本格導入する新たな給付措置と、その導入までのつなぎ措置としての食料品消費減税については、超党派の国民会議の中間取りまとめを踏まえ「8月上旬までをめどにその方針を決定する」とした。
骨太の方針とともに21日に閣議決定した成長戦略では、AI・半導体からゲームやアニメといった17の広範な戦略分野で官民投資を促進する方針を打ち出した。40年までの投資額は累計370兆円超を想定する。
経済安全保障で特に重要な分野については、複数年度で財源を確保した上で、償還財源の裏付けのある「つなぎ国債」の発行で対応する。一般会計とは分けて管理するため、特別会計を活用する。
今後の焦点は、今回決定した方針に基づいて編成する来年度当初予算に移る。債務対GDP比を引き下げていく中でも可能となる財政規模を精査し、「市場の信認確保に配慮しつつ通年の国債発行額などを具体化する」と記している。
高市首相は21日開催の経済財政諮問会議・日本成長戦略会議合同会議で、強い経済の構築と財政の持続可能性を一体的に実現する取り組みをさらに進める中、「国民や国内外の市場関係者に、透明性高くかつ一貫した説明をより丁寧に行うなどコミュニケーションの強化を通じ、市場の信認を確保していく」と語った。
(6段落目に骨太の方針における日銀の自主性に関する記述、7段落目に城内氏の会見内容を追加して更新しました)
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