(ブルームバーグ):サッカーの男子ワールドカップ(W杯)北中米3カ国大会は19日、スペインの優勝で幕を閉じた。トランプ米大統領による前例のない介入で大会の公正性が揺らぐ事態となったものの、史上最も収益性の高いスポーツイベント自体は成功を収めたと言えそうだ。
国際サッカー連盟(FIFA)は大会終了時に発表した声明で、2023-26年の4年間の収入見通しを約20億ドル引き上げた。従来見込んでいた約90億ドルに上積みする格好だ。

今大会では、スタジアムとファンフェスティバル会場を合わせた来場者数が延べ1500万人を超え、観客動員数はW杯史上最多となった。チケット価格が過去最高水準だったにもかかわらずだ。来場したファンや各国代表チームからは、米国の大会運営を評価する声も相次いだ。
ただ、FIFAが収益や権力を優先する姿勢が大会に影を落としたのも事実だろう。その象徴が、米代表FWフォラリン・バログン選手への出場停止処分を巡るトランプ米大統領の介入だった。トランプ氏は、出場停止処分を受けたバログン選手を復帰させるようFIFAのインファンティノ会長に働きかけ、FIFAは同選手に対する処分を異例の形で取り消した。
2度目の優勝を果たしたスペイン代表にFIFAのインファンティノ会長とトランプ氏がトロフィーを授与すると、両氏には会場からブーイングが浴びせられた。
ピッチ上にも政治の色
バログン選手への処分取り消しを巡り、インファンティノ会長はFIFAの独立性を強調したが、サッカーファンは納得しなかったようだ。FIFAとして初めて「平和賞」を授与するなど、トランプ氏に接近する同会長の姿勢があまりにも目立ったためだ。

米国代表のユニホームを着て決勝戦を観戦していた22歳のサッカー選手クロエ・リグセイさんは、「FIFA会長は辞任すべきだ」と批判。「政治はスポーツに持ち込むべきではない」と話した。
もっとも、政治色の濃さに批判が集まる場面は他にもあった。アルゼンチン代表は、イングランドとの準決勝に勝利した後、フォークランド諸島の領有権を主張する横断幕を掲げた。これを受け、英国政府はFIFAに調査を求めた。フォークランド諸島を巡っては、英国とアルゼンチンが1982年に戦火を交えた。

エジプト代表の監督は、 史上初のベスト16入りを決めたオーストラリアとの試合後、パレスチナの旗を掲げて振る姿が見られた。イラン代表は、米国の制裁により、メキシコのベースキャンプから試合のたびに米国へ往復することを余儀なくされたとして、強い不満を示した。
増える収入、強まる不満
今大会は商業面で大成功を収めたものの、FIFAにはなお課題が残る。「規模が大きすぎる」との批判があった48チーム制では、7チームが初めて決勝トーナメントに進出するなど、新たなドラマも生まれた。インファンティノ会長は、2030年大会で出場チーム数を64に拡大する構想を示している。
しかし、W杯の規模拡大が望ましいのかについては議論が残る。今大会は104試合を39日間で実施するなど、規模はすでに巨大化している。FIFAや各国リーグ、大陸連盟が過密日程を課しているとして、選手の間では批判が強まっている。

ファンの間でも、収益拡大を優先するFIFAの姿勢への不満は強まっている。今大会ではW杯で初めてチケットにダイナミックプライシング(変動価格制)を導入し、需要や販売状況に応じて価格が変動する仕組みを採用した。その結果、チケット価格は過去最高水準まで上昇した。
FIFAは今大会で、あらゆる機会を捉えて収益拡大を図った。試合会場での飲食販売やチケット転売収入の一部を得るだけでなく、決勝のアルゼンチン対スペイン戦が行われたピッチの芝まで販売した。
将来の収入拡大にもFIFAは手を打っている。その一つが、今大会で導入された「給水タイム」だ。会場では大きなブーイングが起きるなど物議を醸したが、FIFAは、猛暑の中で選手の健康を守るための措置だと説明している。一方、この中断時間は、米FOXなど放映権を持つテレビ局にとって、広告枠を増やす機会にもなった。
一部の試算によると、W杯中継の30秒CMの広告料は、大会のステージや対戦カード、想定視聴者数に応じて25万-75万ドルに上る。1試合当たり2回の給水タイムにより、放送局は30秒CMを試合中に新たに8枠販売できる。104試合では、計832枠の広告が追加されることになる。

こうして増えた広告枠は、広告料の水準次第では約5億ドルの追加収入を生み出す可能性がある。FIFAはすでに、2030年大会の放映権の売り込みを水面下で始めている。
米国でW杯のスペイン語放映権を取得したNBCユニバーサル・ニュース・グループのセサール・コンデ会長は、メディアイベントで「期待は高かったが、米国のファンの熱狂ぶりがここまでとは夢にも思わなかった」と語った。
収益が拡大し続ける限り、ファンや選手の不満が高まっても、FIFAや加盟協会が路線を見直す理由は乏しい。64チーム制への拡大は、6カ国共催となる2030年大会の運営をさらに複雑にする可能性がある。それでも、関係者にとっては収入増につながり、インファンティノ会長の求心力を高めることになる。
同会長は2027年3月の会長選で、無投票で再選されるとの見方が強い。

原題:World Cup Ends With Glory for Football and Hard Cash for FIFA(抜粋)
--取材協力:Kaitlyn Pohly、Julie Fine、Hannah Miller、Gonzalo Soto.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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