トランプ米大統領がイラン戦争を今後どうする考えなのか、公の場ではほとんどうかがえない。

米国とイランによる攻撃の応酬が週末も続き、ヨルダンで米兵2人が死亡、複数人が負傷したイランの攻撃を受けて戦闘はさらに激化した。トランプ氏が誇っていた暫定的な和平合意は、事実上放棄された格好となっている。

ここ1週間にわたるミサイルや無人機による攻撃の激化は、紛争が再び全面的な戦闘へ発展しかねない危険性を浮き彫りにした。一方、今回の戦争を始めたトランプ氏は、今後どのような対応を取るのかについてほとんど語っていない。

米中央軍は19日、イラク北部で不発となっていたイラン製無人機の爆破処理中に米兵1人が死亡したと発表した。また、ヨルダンで17日起きた攻撃の犠牲者とみられる身元不明の遺体についても、身元確認を進めていることを明らかにした。

米軍に再び死者が出る事態となる中、トランプ大統領がどのような対応に踏み切るのかはなお不透明だ。

トランプ氏は19日、サッカーのワールドカップ(W杯)決勝を観戦した後、記者団に対し、死亡した兵士らについて言及した。

ワシントンに戻った同氏は、兵士らについて「彼らはイランに核兵器を保有させないために戦った偉大な愛国者だった」と述べた。

さらに、「イランは極めて深刻な打撃を受け、軍事的にはほぼ全てを失った」とした上で、「今後どうなるか見守ることになるが、われわれは今夜も非常に大きな打撃を与えた。それは兵士らの犠牲に報いるためだ」と語った。

トランプ大統領はこれまでのところ、軍事行動を大幅に拡大する命令を出していない。19日には、イランへの追加制裁を対ロシア制裁法案に盛り込むよう議会に求めた。

トランプ氏は18日、公の場にほとんど姿を見せず、19日の大半はニュージャージー州でW杯決勝の観戦に費やした。一方、同政権は中東政策について現状維持の姿勢を示唆した。イランへの攻撃を続ける一方で、ホルムズ海峡を通るタンカーの航行維持を図っているが、週末の攻撃の応酬は戦闘がさらに拡大しかねないことを示した。

ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の中東プログラムディレクター、モナ・ヤクービアン氏は、「少なくとも短期的には、事態は残念ながらエスカレートする悪循環に入っている」と指摘する。

ヤクービアン氏によると、17日に米兵が死亡した攻撃への米国の対応には一定の自制が見られたものの、双方の信頼関係が崩れているため緊張緩和は容易ではないという。

「これまで以上に危険な局面を迎えている」と、同氏は話す。

断続的に続くこの紛争は21週目に入り、双方がどのような形で決着を目指すのかはなお見通せない。これは世界経済にとって警戒材料であるだけでなく、トランプ氏にとっても懸念材料だ。

同氏は停戦に応じた理由の一つとして、1929年の株価暴落から世界恐慌につながった当時のフーバー大統領のようにはなりたくないからだと語っている。

トランプ政権は週末、一貫性を欠くメッセージを発信した。2月28日に戦争が始まって以降、米軍の死者は計17人となった。米中央軍は兵士の死亡と報復攻撃を発表した一方、ヘグセス国防長官は、兵士らの死は米国の決意をさらに強固にするだけだと述べた。

トランプ氏の側近ダン・スカビーノ氏は、オペラ「トゥーランドット」のアリア「誰も寝てはならぬ」をBGMに、飛行中のB2ステルス爆撃機を映した意味深な動画を投稿した。

一方、米国は空中給油機を中東へ追加配備していると報じられており、軍事行動がさらに拡大する可能性も取り沙汰されている。ホワイトハウスは同報道へのコメントを控えた。

ライト米エネルギー長官は19日、ホルムズ海峡の航行は再び事実上停止する状況には至っていないと説明し、懸念の払拭(ふっしょく)に努めた。

ライト長官はABCの番組「This Week」で、「米国人の命が失われたのは悲劇だが、この任務は今後数え切れないほど多くの命を救うことにつながる」と述べた。

さらに、「トランプ大統領の焦点は、世界を脅かし、世界の商取引を人質に取っているイランの能力を低下させること、そしてイランの核兵器保有を阻止することにある。その方針は変わっていない」と語った。

ライト氏は、外交による緊張緩和の可能性も排除しなかった。「トランプ大統領は常に外交的な出口を模索している。イランとの平和的な合意によって事態を終結させたい考えだが、それには双方が応じる必要がある」と述べた。

ブルッキングズ研究所の外交政策プログラムで研究ディレクターを務めるマイケル・オハンロン氏は、ベトナム戦争をはじめとする過去の米国の紛争と同じ過ちをトランプ氏が繰り返すことを懸念していると話す。

「心理面と戦略面の圧力を強過ぎず弱過ぎず、適切な水準に保とうとしても、歴史を振り返れば、それを実現するのは極めて難しい」と指摘。その上で、イランはトランプ大統領が中間選挙を有利に進めるためにも合意を必要としているとみているようだとの見方を示す。

オハンロン氏は「イランは今、トランプ氏が合意を切望しており、自国の方が交渉で優位に立っていると考えている」と分析した。

応酬の激化は、トランプ氏とバンス副大統領がこれまで繰り返し批判してきた海外への軍事介入が泥沼化する危険性を改めて浮き彫りにしている。

トランプ大統領はこれまで、イランの原油輸出の拠点であるカーグ島の制圧を試みる可能性を含め、米軍の関与を一段と強める考えに言及したことがある。一方で、紛争が長引くほど、米軍の装備や、長期間にわたって寄港できない艦船の乗組員への負担も増している。

ヤクービアン氏はトランプ氏にとって、「今や良い選択肢はない。あるのは悪い選択肢と、それよりはましな選択肢だけだ」と指摘。「この紛争は新たな段階に入りつつある可能性がある。残念ながら、双方が再び譲歩するまでには、さらに大きな痛みが伴うことになるかもしれない」と述べた。

原題:Trump Silent So Far on Iran Plans as US Death Toll Hits 17 (1)(抜粋)

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