(ブルームバーグ):韓国株の値動きが世界の株式市場を揺るがしている。半導体メモリーで世界大手2社の株価が急騰し、AI相場の中心に成長したからだ。日本株にとっても米国株以上に連動性が高まり、アジアの新興国市場に過ぎなかったかつての面影はない。

日本株を20年以上ウオッチするオルタス・アドバイザーズの日本株戦略責任者、アンドリュー・ジャクソン氏は今年に入り初めて韓国総合株価指数(KOSPI)のチャートを日々チェックするデータに加えた。
ジャクソン氏は「AIへのリスク選好がどう展開しているのかを把握するため、以前よりも明らかにKOSPIを注視するようになっている」と明かし、KOSPIの上昇はSKハイニックスとサムスン電子の半導体メモリー2社の強さを表しており、日本のキオクシアホールディングスや半導体製造装置株の方向感も決めると指摘する。
半導体関連などテクノロジー株の影響度が大きいKOSPIと日経平均株価の30分ローリング相関の日中平均を見ると、足元で0.6を上回る水準まで上昇し、両指数の短期的な連動性は年初と比べ3倍以上に高まっている。

KOSPIと日経平均の連動性の高まりは、生成AIの成長でデータセンターの拡張と半導体需要の増大が意識された昨年秋ごろから鮮明化。対照的に米ナスダック100指数と日経平均は、イラン情勢の緊迫で原油輸入国と輸出国の違いが意識された今年2-3月にかけ逆相関に陥った。連動性は足元で回復しているが、相関係数は日米よりも日韓の方が大きく上回っている。

日本にとどまらず、韓国株の影響は米国や欧州にも波及している。特に相場の下落局面で反応が大きく、ブルームバーグが集計したデータによると、韓国の軟調局面における米ナスダック100指数とKOSPIの感応度は今月、1990年以降の最高水準に達した。MSCI世界株指数とも4年ぶりの高感応状態だ。
パインブリッジ・インベストメンツのグローバルマルチ資産ポートフォリオマネジャー、ハニ・レダ氏(ロンドン在勤)もAI銘柄の相場状況を探るため、毎日の取引開始時に韓国株の動向を確認するようになった一人。SKの米預託証券(ADR)上場後は韓国市場の終了後も価格をチェックし、ニューヨーク上場の韓国関連のETFと共に動向を注視している。
レダ氏によると、AI相場の先行きについて特に機関投資家の間で懐疑論が強く、ポジティブな材料よりもネガティブな材料に目が向きやすいため、相場の下落局面で値動きにバイアスがかかると話した。

世界市場との密接な関係はAI相場の主役を抱えると共に、韓国株自体の値動きの大きさも一因だ。日々の株価変動の2倍の値動きを目指すレバレッジ型上場投資信託(ETF)が急速に普及。設定されたレバレッジ比率を維持するため、毎日リバランス取引を行うことが値動きを増幅し、需給をかく乱しており、ファンダメンタルズから乖離(かいり)した状況に専門家も警戒感を強めている。
スパークス・アセット・マネジメントの常峰隆一運用調査本部副本部長は、韓国株は指数の構成比や個人投資家の動向を背景にダイナミックに動くため、株価の動きをうのみにするのではなく、現地拠点のチームと連携して情報や材料の分析に努めていると言う。スパークスは、SKやサムスンの競合であるキオクシアHD株を保有している。
韓国と日本の連動性の高まりと変動の激しさは、アジア投資家の存在感が増していることとも無縁ではない。UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメントの小林千紗日本株ストラテジストは、アジアの中でも韓国と中国は短期志向の個人投資家の売買が多く、回転率が高い傾向にあると指摘。こうしたアジア勢の買いが日本株の値動きを増幅したとの見方を示す。
日本取引所グループが公表する海外投資家地域別株券売買状況によると、今年1-6月にアジア投資家は日本株を差し引き2兆3700億円買い越した。欧州や北米の買越額には及ばないが、前年同期の2900億円からは急拡大した。
小林氏は、メモリーや半導体製造装置などアジア市場と類似する企業が多い日本市場の分かりやすさもアジア勢の買いにつながっていると分析。AI相場が続く限り、サプライチェーン(供給網)で同じような恩恵を受ける日韓両国の株式が連動することを「新しい常識と受け入れるしかない」と述べている。

JPモルガン・アセット・マネジメントのアジア太平洋担当チーフマーケットストラテジスト、タイ・フイ氏(香港在勤)は「新興市場ではセクターのテーマや特定の政策を背景に常に物色対象が入れ替わる」と指摘。「3年後にはまた別の市場が台頭しているかもしれない」と韓国株上昇の持続性について疑問視している。
もっとも、世界での存在感が増し、売買の活況も続く韓国株市場から投資家が視線をそらす可能性は当面低そうだ。
ニューヨークが拠点のティグレス・ファイナンシャル・パートナーズの最高投資責任者(CIO)、アイバン・ファインセス氏は、韓国株の急反転が起きれば投資家心理の悪化を通じて米ハイテク株に波及し、下げが増幅する恐れがあると警戒する半面、SKやサムスン、KOSPIは「遠い新興国市場の脇役ではなく、米AI・半導体株のリスクを占う手掛かりとして機能している」と語った。
--取材協力:Izabella Wieckowska、佐野日出之、Sangmi Cha.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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