日本の長期金利が上昇している背景を考えると、まずは政局の安定が重要

国内市場では、7月2日に実施された10年債入札が弱めの結果になったこともあり、長期金利は3日には一時2.810%をつけた。「『指標銘柄』が長期金利とされていた1996年10月以来の高さ」(NQN)だという。足元の長期金利の上昇要因については、様々な指摘がある。円安圧力が強くなっているため、インフレ懸念が主因であるという見方もあれば、財政リスクや政治リスクがプレミアムとなっているという指摘もある。データを確認すると、長期金利は6月15日の約2.58%から、7月3日の約2.79%まで、約+20bpとなった。このうち、インフレ予想(BEI)の変化は約▲8bp(約2.134%⇒約2.055%)で、実質金利の変化は約+28bp(約0.448%⇒約0.731%)となっている。このデータを見る限り、インフレ懸念が長期金利のドライバーとは言い難い。なお、円OIS市場が織り込む26年中の利上げ回数の見通しは、7月3日時点で約0.87回である。この数字は6月15-16日の決定会合で利上げが決まった後(約0.84回)とほとんど変わっていない。日銀のタカ派観測が金利上昇に寄与している可能性も低い。

市場では「骨太の方針2026」に、政府が日銀の利上げをけん制する表現が入ることを懸念する声が多い。日銀がビハインドザカーブに陥るリスクは高まっている。だが、原油安が進んでいることもあってインフレ予想は低下している。政府と日銀の関係が足元の長期金利の上昇を促しているとは言えない。

以上を勘案すると、実質金利が大きく上昇していることが重要そうである。一般に、実質金利は長期的な実体経済の見通し(自然利子率の動向)や、財政リスクが変動要因となる。実体経済の見通しについては、7月1日に公表された日銀短観(6月調査)が堅調な結果だったことが、足元の実質金利を押し上げている可能性がある。実体経済の推移を確認する必要がある。しかし、長期金利(2.8%程度)と同程度の名目成長を続けることができるかというと、そう簡単ではないだろう。いわゆるフィッシャー方程式の観点からは、金利上昇余地はそれほど大きくないと言える。

他方、財政リスクについては、不透明感が強い状況が続きそうである。消費税率の引き下げの判断は先送りされているだけでなく、防衛費の目標水準についても不透明感が強い。これらを決断することになる政権についても、皇室典範改正案や議員定数削減・副首都構想などを巡る政局混迷の最中にある。足元の政局次第では自民・維新の連立政権の枠組みが変わってくる可能性もあるため、経済・財政についても不透明感が強いと言わざるを得ない。

まずは足元の政治の安定が債券市場には重要だろうと、筆者はみている。もっとも、最終的には(通常国会の会期を延長するかどうかなど)高市首相の判断で決まる。政局の混迷は今がピークである可能性が高い。年末にかけて、長期金利は徐々に低下していくだろうと、筆者は予想している。

(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)