今週予定されている韓国SKハイニックスの290億ドル(約4兆6800億円)規模の米国株式市場への上場は、外国企業として過去最大級となる可能性がある。ただ、目的は資金調達だけではない。市場で最も注目を集めるAI向けメモリーチップ分野で存在感を高める狙いもある。

韓国の半導体メーカーであるSKハイニックスは長年、米国最大の競合であるマイクロン・テクノロジーより低い株式評価で取引されてきた。しかし、米国市場への上場によってAI関連銘柄への旺盛な投資資金を取り込めば、株価評価を引き上げられる可能性がある。AIデータセンター向けのメモリーチップや関連機器を手掛ける企業が、S&P500種株価指数の上昇をけん引しているためだ。

韓国の龍仁市で建設中のSKハイニックスの半導体工場(6月30日)

マイクロン株を保有するシノバス・トラストのシニア・ポートフォリオ・マネジャー、ダニエル・モーガン氏は「半導体株への熱狂が極めて強い局面にある。米国の投資家を株主として取り込むには絶好のタイミングだ」と話した。

SKハイニックスへの投資は、多くの米投資家にとって不可能ではなくとも困難だった。今年242%上昇し、S&P500で2番目に高い上昇率となっているマイクロンと同様、SKハイニックスも高帯域幅メモリー(HBM)への需要急増の恩恵を受けている。しかし、韓国市場に上場するSKハイニックス株を直接保有するには、米国時間外で取引しなければならない。もう1つの選択肢は、店頭市場でスポンサーなしの米国預託証券(ADR)を購入することだが、こうしたADRは韓国上場株を下回る値動きとなっている上、流動性も極めて低く、売買は容易ではない。

10日に予定されるSKハイニックスのナスダック上場は、マイクロンとの評価差を縮める可能性がある。SKハイニックスの今後12カ月の予想利益を基にした株価収益率(PER)は6.2倍。一方、マイクロンは先週、株価が3月以来最大となる14%下落を記録したことで現在は7倍となっているが、6月22日時点では11倍を上回っていた。

SKハイニックス株を保有するソーンバーグ・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ディ・ジョウ氏は、「今回の上場は、韓国株式市場にアクセスできない投資家を対象としている」と指摘。「ナスダック上場により、AIメモリー市場を代表する企業の1社に、摩擦なく直接投資できるようになる」と述べた。

過去1年でSKハイニックスの韓国上場株とマイクロン株はいずれも約700%上昇し、両社の時価総額は1兆ドルを超えた。メモリー・ストレージ関連企業全体にも株価上昇は広がっている。サンディスクは同期間に3676%上昇し、ウエスタン・デジタルやシーゲイト・テクノロジー・ホールディングスも大幅高となっており、フィラデルフィア半導体指数も過去12カ月で125%上昇した。

好況は続くのか

ただ、こうした好況がいつまで続くのかを巡り、投資家の警戒感は強まりつつある。メモリー需要の大半を支えるアルファベットやマイクロソフトなどの巨大テック企業は、これまで手元資金で賄ってきた投資を、債券市場や株式市場での資金調達に頼る傾向を強めている。こうした設備投資がメモリーメーカーの利益を大きく押し上げてきたが、その資金供給が止まれば状況は一変する。

リバー・ウェルス・アドバイザーズのエド・オゴーマン最高経営責任者(CEO)は、「投資家は投機的バブルになりかねない局面に足を踏み入れるリスクを負っている」とし、「これほど上昇した銘柄への投資は細心の注意が必要だ」と語った。

一方で、SKハイニックスのADRは、AI投資の最大の恩恵を受ける企業への投資手段を求める多くの米国投資家の関心を集めることは間違いない。

SKハイニックスは2026年の純利益が221兆ウォン(約23兆円)、売上高が355兆ウォンとなり、それぞれ2025年比415%、265%増となる見通しだ。一方、マイクロンは8月31日に終了する今会計年度に、純利益が876%増の約830億ドル、売上高が247%増の1300億ドルとなる見込みだ。

需要拡大に対応するため、SKハイニックスは韓国で2つの生産工場建設に数千億ドルを投じる計画で、今回の調達資金はこうした投資資金の一部に充てられる。一方で、生産能力の拡大は、需要が鈍化した場合に供給過剰を招く恐れもある。

メモリー業界は好不況の波が激しいことで知られる。わずか3年前には需要低迷でメモリーチップ価格が急落し、マイクロンとSKハイニックスはいずれも赤字に陥った。

今回の米国上場の明確な利点の1つは、SKハイニックスが米国の株価指数への採用対象となることで、指数連動型の上場投資信託(ETF)による買い需要が見込める点だ。

ウォール街の強気派は、豊富な資金基盤、通常の市場時間帯に取引できること、将来的なナスダック100指数への採用の可能性を、ADRに前向きな理由として挙げる。さらに、米国上場により、ナスダック上場ADRとソウル上場株との価格差を利用する裁定取引を狙うヘッジファンドを引きつけるとみられる。

原題:SK Hynix Seeks Access to AI Investors in $29 Billion US Listing(抜粋)

(市場関係者のコメントなどを追加して更新します)

--取材協力:Dave Sebastian.

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