米テック大手が巨額の資金を投じて「AIの有用性」を証明する取り組みに注力し始めた。背景には、導入する側の顧客企業がAIコストの増加に直面しているほか、AI投資で確かなリターンを得られるのか疑問が生じていることがある。

ここにきて注目を集めているのが、顧客企業に常駐してAIの導入を支援する「フォワード・デプロイド・エンジニア(FDE)」の存在だ。2010年代にパランティア・テクノロジーズが先駆者として普及させた職種で、エンジニアでありながらコンサルタントの役割も担う。

顧客企業によるAIアプリケーションの活用や新たなAIツールの構築を支援する人材として、AI時代に引く手あまたとなっている。

アマゾンとマイクロソフトはこのほど、FDEへの大規模投資を相次ぎ発表した。アマゾンのクラウド部門アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は、FDE専門組織に10億ドル(約1600億円)を投じ、数千人規模のエンジニアを配置する計画だ。マイクロソフトは25億ドルを投資し、約6000人を投入する。

こうした動きに先立ち、AIスタートアップ大手のOpenAIとアンソロピックも今年、金融大手やコンサルティング会社と提携して常駐技術者の拡充策を打ち出していた。

OpenAIは、40億ドルを初期投資として新組織「OpenAI Deployment Company」を立ち上げたと発表。新たな資金調達前の企業価値は100億ドルと説明した。

一方、アンソロピックのFDE組織に対しても、ブラックストーンやゴールドマン・サックス・グループを含むプライベートエクイティー(PE)投資家が計15億ドルを投資した。

背景には、AI新興からテック大手に至るまで、法人顧客こそがAI事業最大の「ドル箱」だとの見方が強まっていることがある。アンソロピックは企業向けAI契約で売上高を急拡大させており、OpenAIも今年、消費者向け事業より企業向け販売を優先する戦略へと軸足を移した。

もっとも、企業のAI導入は急速に進む一方で、期待した成果を上げているケースは少ない。KPMGの最近の調査では、経営幹部の79%がAIを重要な投資分野と位置付けた一方、AI投資で具体的な成果を得られたと回答した企業はわずか7%にとどまった。

AWSで最先端AIエンジニアリング・サービス部門のバイスプレジデントを務めるフランチェスカ・バスケス氏は、サービスを提供するテック企業に対しては、AI投資の成果を証明するよう強い圧力がかかっていると指摘した。

サービス提供側は、AIの試験導入段階から、実用的で個別に最適化されたAIソリューションの構築段階へと顧客企業を移行させる必要があるとし、「何でもかんでもFDEと銘打てば済むという話ではない」と述べた。こうした取り組みは、自律型AI(エージェントAI)の高度化が進む中で、ますます重要になっているという。

バスケス氏は「一時的な流行とは考えていない。多くの企業にとって、FDEは事業運営上の必須要件になるだろう」と話した。

マイクロソフト商業部門のジャドソン・アルソフ最高経営責任者(CEO)は、顧客企業がAIコストの上昇を懸念していることも、新組織設立の理由の一つだと説明した。高価なAIモデルを「オープンソースや小規模モデル」に切り替えるなどして、顧客のコスト削減を支援したい考えだという。

バスケス氏は、AWSのFDEは「特定のモデルに依存しない」と説明。顧客のニーズに応じて、自社モデルだけでなく、「Amazon Bedrock」を通じて提供する最先端モデルを活用したツールも構築できると述べた。

FDEへの投資は、すでに熾烈(しれつ)なAIエンジニア人材の獲得競争をさらに激化させそうだ。マイクロソフトとAWSは、社内人材の活用に加え、必要に応じて外部からも採用を進める方針だ。

さらにグーグルやセールスフォースなど他のテック企業も、数百人から数千人規模の採用を進めており、営業力を兼ね備えた技術者を巡っては、売り手市場の様相が一段と強まりそうだ。

原題:Big Tech Deploys AI Whisperers to Aid Customers: Tech In Depth(抜粋)

--取材協力:Brody Ford.

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