テレワークやハイブリッド勤務を維持するチャンスを高めたいなら、自己愛の強い上司の下では働かないことだ。

新型コロナウイルス禍後、企業幹部はイノベーションやコラボレーション、企業文化、メンタリング、生産性、業績といったビジネス界で好んで使われる流行語を並べ、社員に週5日の出社を求める理由としてきた。ありきたりな決まり文句はさておき、その中には妥当で正当なものもある。

しかし、新たに公表された研究論文によると、上司が在宅勤務に反対する理由は、他の何よりも、自尊心や支配欲、地位への執着によるものである可能性が高いことが示された。

論文を執筆したのは、ペンシルベニア大学ウォートン校のマリッサ・シャンデル、コートニー・エリオット、アダム・グラント各氏だ。著者らはニューヨーク・タイムズへの寄稿でも詳述しており、一読の価値がある。

今回の研究結果は、筆者がこの1年半ほど追ってきた流れとも一致する。AIを巡る不安や大規模な人員削減を背景に、職場での力関係は再び経営側へと傾き、上司は大小さまざまな場面で権威を誇示し、取り戻そうとしている。今や「指揮統制」の時代を迎えており、懐柔や説得は大幅に減り、要求を突きつけることがはるかに増えた。

「言うことを聞け」という管理スタイルの復活は、従業員の異論を抑え込み、監視を拡大させている。労働市場が逼迫(ひっぱく)していた時期に優秀な人材の確保や定着を目指して導入された福利厚生の大幅な削減にもつながっている。

また、勤務時間外も含めた従業員の発信の仕方や、週5日の出社、服装だけでなく振る舞いに至るまで、新たなルールや規定が次々と導入されるようになった。

「オフィスという祭壇で私を崇拝せよ:ナルシストの上司がテレワークを嫌う理由」と題された今回の論文は、職場での締め付けが厳しくなる中で、多くの従業員が感じてきた疑念を裏付けている。つまり、こうした決定は往々にして企業の業績改善とは関係なく、上司が権力を誇示することが目的なのだ。

論文では、ナルシシズムこそが、テレワークへの抵抗を確実に予測できる唯一の特性であることが示された。上司のエゴが強いほど、権威や称賛を求め、部下のオフィス勤務を渇望する傾向が強かった。

今回実施された3つの研究分析のうちの1つでは、フォーチュン500企業のCEOを対象に、報酬額や年次報告書に掲載された署名や写真の大きさからエゴを測った。

筆者の記事に使われた写真をCEOが気に入らないという理由で、パニックに陥った広報担当者から何度も電話を受けた長年の経験から言えば、これはナルシシズムの確かな目安だと言える。

研究では、点数が高いほど、自社の会長を務めたり、他社の取締役に就任したりする傾向が強かった。また、スコア高めの層こそが、在宅勤務についても辛辣な発言をしていた。例えば、「ニューヨーク並みの給料が欲しければ、ニューヨークで働け」といった具合だ。

なぜ自己中心的なリーダーはテレワークを嫌うのか。従来の研究では、自分のイメージを演出しやすく、広く発信できることから、ナルシストほどデジタル環境を好むと指摘されてきた。

しかし今回の研究では、自己中心的な上司が最も欲する権力や地位がリモート環境では奪われてしまうことが分かった。話を遮る、大声で話す、強い視線を送る、突然会議を招集するといった従来の手法が使えない状況では、「ナルシシズムの源」を満たすことが難しいためだ。

ビデオ会議において、従業員は上司の顔を見ると身構えやすく、敬意を示すよりも退屈そうな表情や疲れた様子を見せる傾向があるとの研究結果にも言及している。

従業員はまた、Slackの投稿を無視したり、メールを削除したりすることで、新たな形で主導権を握ることもできる。Zoomではカメラをオフにすることも可能だ。オフィスの広さや座席配置といった職場での地位を示す指標は、消え去ってしまう。

「これにより、権力のバランスが従業員側に大きく傾くため、ナルシストの上司は権威という『平均台』から転落するリスクにさらされる」と論文では指摘している。要するに、従業員に週5日の出社を義務付けることは、自らの地位を脅かされている上司が、自らの支配力を再確立するための手段なのだ。

もっとも、念のために言うと、週5日出社を求める幹部がすべてナルシストというわけではない。それでも、今回の研究は、出社義務がなぜコロナ禍後の企業社会を象徴する争点となったのかを理解する手掛かりを与えてくれる。

単に自宅で働くかオフィスで働くかという問題ではない。何より権力に関する問題なのだ。つまり、誰が権力を握り、誰が権力を失い、権力を取り戻すためにどこまで踏み込むのかということだ。

(ベス・コウィット氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、米企業を担当しています。以前はフォーチュン誌のシニアライター兼エディターでした。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Want to WFH? Make Sure Your Boss Isn’t a Narcissist: Beth Kowitt(抜粋)

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