世界的なAI相場の恩恵を大きく取り逃したインド株式市場が、足元の市場の混乱を乗り切ろうとする投資家の関心を再び集めている。

AIブームがアジアから米国までの主要株価指数を大きく揺さぶる中、NSEニフティ50指数は世界の投資家にとって一種の安全資産としての位置付けを強めつつある。今年上半期には、同指数の値動きが前日比1%以上となった日は全体の約3分の1にとどまった。MSCI新興国指数を下回り、S&P500種株価指数をわずかに上回る程度だった。

インド市場にはAI関連銘柄が乏しいことから、今年の大半は韓国や台湾など高いリターンを上げた市場に資金が流れ、インド株には逆風となっていた。しかし、その取引の持続性への懸念が強まる中、投資家の関心は徐々にインドへ戻りつつある。6月には、ニフティ50指数のMSCI新興国指数に対するパフォーマンスが2025年11月以来最大となり、海外投資家の資金流出額も4カ月ぶりの低水準となった。

アーケビウム・キャピタルの最高投資責任者(CIO)、マクサンス・ヴィソー氏は「インド市場が落ち着いている理由は一つだ。AI相場の外側に位置していることだ」と指摘。インド市場に中立的な見方を維持し、分散投資先として活用していると説明し、「インドは新興国市場全体の中でAIヘッジとして機能する」と語った。

インド株は今年に入って世界でも低調な市場の一つとなっているが、流れは変わり始めている。ルピー相場は過去最安値を付けた後に安定し、中東情勢の緊張緩和を背景に、原油価格の上昇も一服した。これにより、製油会社や航空会社の株価を押し下げていた要因が和らいだ。

こうした動きを受け、インフレへの懸念が後退し、インド経済の成長見通しも改善したと、6月末に公表された政府報告書は指摘している。

一方、市場では今後始まる決算発表シーズンへの期待も高まっており、9日にタタ・コンサルタンシー・サービシズが先陣を切る。

調査会社アスク・サンディップ・サバルワルの創業者、サンディップ・サバルワル氏は「コモディティー価格の下落がインドのマクロ経済見通しをほぼ一夜で変えた」と指摘。その上で「コモディティー価格の下落、資本流入の改善、安定した金利環境により、今後数四半期は利益予想の上方修正が下方修正を上回る可能性が高い」と指摘した。

モルガン・スタンレーのリダム・デサイ氏らアナリストは先月、顧客向けリポートで、インドは「はるかに大きなマクロ資産クラス」となったと指摘した。近年はインフレ率の変動が小さくなり、株式市場のバリュエーションを支えるとともに、世界的なショックにも以前より耐性のあるディフェンシブ成長市場へと変化したとしている。過去10年間でニフティ50指数は約3倍に上昇し、そのうち6年間で年間10%を超える上昇率を記録した。

2026年上半期にニフティ50指数が上下いずれかに1%以上変動した取引日は38日だった。これに対し、MSCIの新興国指数およびアジア太平洋指数はいずれも59日、S&P500は32日だった。韓国総合株価指数(KOSPI)は79日と突出しており、26年の営業日の約3分の2で1%以上の変動があった。

一方、インドNSEボラティリティー指数は6月に3カ月連続で低下し、1年平均を下回る水準となった。3日には2月以来の低水準を付けた。

これは4月とは対照的な動きだ。当時はニフティ50が安値まで下落した直後で、同指数は、シカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー指数(VIX)に対して1年ぶりの高水準となっていた。

エクイラスセキュリティーズのクオンツアナリスト、クルティ・シャー氏は、ニフティ50には「強気基調」があるとみており、さらなる上昇を見込んだコールスプレッド戦略を選好している。また、今後の決算シーズンでは市場予想を上回る好材料が出る可能性があるとの見方を示した。

ブラックロック・インベストメント・インスティテュートの中東・アジア太平洋(APAC)担当チーフ投資ストラテジスト、ベン・パウエル氏は、「インド市場は今年前半、エネルギー価格の上昇、高いバリュエーション、AI関連銘柄への限定的なエクスポージャーによって出遅れていた」とした上で、「そうした圧力が和らいだことで、投資家はAI関連市場以外にも目を向け始める可能性がある。それによって、インドは新興国市場の中で差別化された投資機会として再び投資家の注目を集める可能性がある」と指摘した。

原題:Investors Looking for Shelter From AI Storm Are Turning to India(抜粋)

--取材協力:Christian Dass.

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