コンピューティングの歴史の大半において、競合する半導体メーカーは、自社製品の相対的な性能を巡って公然と応酬を繰り広げてきた。ただし、その主張の多くは世界人口の99%にとって理解不能なものだった。

さまざまなベンチマークのスコアを巡る解読困難な主張には、それなりの重要性があった。人工知能(AI)ハードウエアの中心的存在となる前の米エヌビディアは、今では消滅した数多くの企業の製品と比較しながら、自社のグラフィックスチップの性能向上に数十年を費やした。

同社はその競争に勝利し、データセンター向け部品事業で大きな武器となった競争心と警戒心を磨き上げた。

約20年前にグラフィックス分野でエヌビディアのライバルだったATIを買収した米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は現在、「トムズ・ハードウエア」のようなサイトが公開する極めて詳細かつ専門的なグラフィックスカード性能ランキングで、上位に名を連ねる数少ない企業となっている。

同様に、米インテルと長年のライバルであるAMDは、どちらのチップがどの用途で優れているかを巡り、独自の主張と反論の応酬を続けてきた。パーセンテージや倍率があらゆる方向に飛び交った。

多くの人は中央演算処理装置(CPU)と画像処理装置(GPU)の違いを説明するのに苦労するだろうし、ノートパソコンのメモリー、DRAMの容量が「エクセル」の使い勝手にどのような影響を与えるのか理解していないかもしれない。

それでもベンチマークを巡る争いは一般消費者にも波及し、購買意識に影響を与えてきた。AMDがここ数年、多くのCPUベンチマークで首位だと言えるようになったことは、同社ブランドの価値を押し上げ、インテルから大きなシェアを奪う後押しとなった。

また、コンピューターを専門のエンジニアが購入するデータセンター市場では、顧客自身がテストを実施できるため、性能指標の重要性はさらに高い。ここでもAMDがインテルからシェアを奪ってきた動きは、多くの主要ベンチマークでの優位性と重なっている。

各社は長年にわたり、自社製品が最も優れている分野を強調する結果をアピールしてきた。その一方、裏工作やベンチマーク不正に関する指摘と反論も数多く聞こえてきた。

客観的であるはずのベンチマークは、データを操作したり都合よく再解釈したりしたいと考える人が現れるほど重要な存在になった。その結果、この取り組み自体がより主観的になり、本来の価値を失っていった。

エージェント

そしてAIが登場し、それに対する答えを持っていたのは1社だけだった。

GPUベースのアクセラレーター半導体を武器とするエヌビディアは、競争相手を大きく引き離し、性能を測る唯一の指標は数量になった。つまり、エヌビディア製GPUをどれだけ購入できるのかと、競合他社がどれだけ確保できるのかということだ。

Photographer: Lam Yik Fei/Bloomberg

エヌビディアの驚異的な売上高急増は、その支配的地位を反映している。一方、競合各社は言及に値する新たな設計を開発するだけでも苦戦していた。

一部の業界幹部はエヌビディア製品の価格や消費電力を批判したものの、自社製品の方が優れていると言い張る企業はほとんどなかった。

エヌビディアの創業者兼最高経営責任者(CEO)ジェンスン・フアン氏は、設計を毎年更新し、競合他社が弱点を指摘するよりも速いペースで新機能や新部品を追加することで、同社の立ち位置をさらに強固なものにした。

こうした現状は、ライバル勢の厳しい年月を意味した。そして、企業プレゼンテーションで極小の脚注付きの理解しづらい性能グラフを提示するという長年の習慣も休止状態となった。

しかし現在、「MLPerf」のようなベンチマークが再び存在感を高めている。業界は再びCPUに注目している。需要の中心がAIモデルの構築からAIソフトウエアやサービスの実行へと移行する中で、汎用(はんよう)プロセッサーであるCPUが復権しつつある。

エヌビディアもその流れを認め、これまで後回しにしていた分野に経営資源を投入している。同社の新しいCPU「Vera」は、最近のフアン氏のプレゼンテーションで他のどの製品よりも多く取り上げられている。

性能測定が、突如として復活した。米セレブラス・システムズは同社製チップのスピードを誇示するデモンストレーションや多数のスライドを公開し、それが半導体企業による過去最大級の新規株式公開(IPO)につながる一因となった。

Veraを巡る盛り上がりに対し、AMDはグラフを用いてけん制した。同社によれば、個々のチップ性能は重要ではない。実際のシステム内でそれらの部品がどのような性能を発揮するかの方が適切な指標だという。

AMDのグラフでは、同社の「EPYC」シリーズがその競争で明確な勝者とされていた。一方、エヌビディアはAI機器の性能を測定する新たな手法を推進している。

「エージェント」と呼ばれる複雑な回答や提案をユーザーに提供するために連携して動作する小規模な特化型AIプログラムには、新しいハードウエア構成が必要になる。

エヌビディアによると、現行設計の「Grace Blackwell」は前世代と比べて「エージェントPerf」の結果を大幅に改善させた。さらに、今後投入される「Vera Rubin」設計では、その性能が一段と向上するとしている。

こうしたテスト結果を自社の研究施設で再現できるかどうか、あるいは「MLPerfトレーニング6.0」の結果が何を意味するのか見当もつかないとしても、それらが再び話題になっているという事実は重要だ。

それは、しばらく沈静化していた半導体業界の競争が再び熱を帯びていることを示している。

(この記事は、テクノロジー業界のビジネスを世界中のブルームバーグ記者が掘り下げて伝えるニュースレター「Tech In Depth」からの抜粋です)

原題:Chipmakers Renew Fight on Nerdy Performance Tests: Tech In Depth(抜粋)

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