政府は東京電力福島第1原発の「処理水」について、今年の春から夏ごろに海洋放出する方針を決定しました。一方、地元福島の漁業関係者からは風評被害を懸念する声が上がっています。

けさ開かれた関係閣僚会議。政府は福島第1原発の「処理水」について、放出設備の工事完了や原子力規制委員会による検査などを経て、「今年春から夏ごろ」に海洋放出を開始する方針を決定しました。

政府はおととし4月、放出時期を「2年程度後」をめどとする基本方針を決定。それが「今年春ごろ」にあたります。

しかし、放出設備の工事進捗などが春には間に合わない可能性を考慮し「今年春から夏ごろ」という表現になったとみられます。

西村経済産業大臣
「2年後程度を目途とした放出時期より遅れているという認識はない」

東京電力は、トリチウムの濃度を国の基準の40分の1に当たる1500ベクレルを下回る濃度まで薄めて海に放出することにしています。

しかし、地元福島の漁業関係者は風評被害を強く懸念しています。

漁師
「(政府は)漁業者よりもやっぱり消費者の方にもちゃんとした説明責任をこれからもやってもらいたい。風評被害がきたら死活問題になるのであくまでも(私は)反対の方針」

漁業関係者
「いままでの努力が水の泡になっちゃうから。万が一、風評が大変になったら、生活を支えてくれるためには補償という形にしかもっていきようがない。言葉だけじゃ生活できない」

東京電力ホールディングス 小早川智明社長
「まだまだ(地元の)理解がしっかり進んでるという状況にはないと思うので、様々なご不安ご懸念にしっかりと向き合って丁寧に説明を尽くし、1人でも多くのご理解を醸成できるように努めたい」

政府は漁業者について、放出の影響を受ける場合は新たに設けた500億円の基金を使い、漁場の開拓にかかわる経費や燃料費などを支援していく方針です。