商業港から軍事拠点へ?国家安全保障をめぐる対立
チャンカイ港をめぐる問題は、単なる海外投資にとどまらず、国家安全保障の問題へと発展しています。トランプ政権の関係者は、この港が経済活動だけでなく、将来的に軍事活動にも利用される可能性を示唆しています。ペルー政府と中国政府はこれを強く否定していますが、アメリカの懸念には根拠がないわけではありません。
アメリカの情報機関は、アフリカのジブチにある中国初の海外基地に続き、さらに基地が増えると見ています。実際にジブチの商業港は、最終的に中国初の本格的な海外軍事基地へと姿を変えました。現在、中国が経営権を握る17港のうち14港は、商業と軍事の両方で利用可能だと考えられています。そこには商船や石油タンカーだけでなく、給油船や補給船、さらには戦艦さえも停泊できる設備が備わっている可能性があるのです。

世界中に点在するアメリカ軍の基地とは対照的に、中国の海外海軍基地は今のところ1カ所のみです。実はアメリカもジブチに海軍基地を持っており、世界全体で少なくとも127の海外基地を展開しています。中国当局は港湾の軍事利用を強く否定しているものの、多くの国々は中国の港湾事業者がスパイ拠点となり、周辺の動きを探るのではないかと警戒を強めています。
パナマ運河の危機と西側諸国の防衛策
より差し迫った懸念は、中国が貿易戦争において港を戦略的に利用することです。アメリカにとって「経済の生命線」であるパナマ運河でも緊張が高まっています。世界貿易の約5%、そしてアメリカのコンテナ輸送の40%が経由するパナマ運河がスムーズに通過できなくなれば、アメリカの貿易は甚大な打撃を受けます。

現在、この運河の両側にある2つの港は、香港の複合企業であるCKハチソンが所有しています。実質的に中国政府が同社を直接管理しているわけではありませんが、企業幹部が中国共産党と関係している可能性が、西側諸国を大いに不安にさせています。外国勢力が自国企業を通じて運河を封鎖する能力を持つことは、アメリカの国益と安全保障に対する直接的な脅威となります。
中国側はパナマの主権を尊重し、経済的威圧には反対すると述べる一方で、CKハチソンの港湾管理権をアメリカのブラックロックに譲渡する取引に対しては「国益を損なう」と強く反発しています。
こうした動きを受け、EU(欧州連合)でも中国による港湾などの重要インフラ買収を難しくするため、新たな投資審査規制を導入しました。また、入港料をめぐる報復的な値上げなども海運業界に波紋を広げています。
