・専門職化やIT分野進出で日本の女性の転職・職域拡大が進展

・総合職や管理職割合の上昇により、職務の高度化も同時進行

・人的資本蓄積が、女性の正社員転職や賃金上昇を支える要因に

中期的に、女性の正社員転職や賃金上昇を伴う転職が増えるなど、女性のキャリア採用市場が量と質の両面で改善してきている。こうした変化の背景としては、人手不足をはじめとする企業側の採用環境の変化がある。しかし、それだけではない。女性自身の人的資本や職務経験も大きく変化している。かつて女性は、事務補助職や補助的業務に集中し、専門職や管理職への進出は限定的だった。しかし近年では、医療・福祉やIT、経営、金融などの専門職に加え、総合職や管理職として高度な職務に就く女性も増えている。

女性の転職市場の改善は、企業側の人材不足だけでなく、女性自身の職域拡大と職務の高度化という供給側の変化によって支えられている可能性がある。そこで本稿では、国勢調査や雇用均等基本調査を用いて、女性の専門職化と管理職化の中期的変化を確認する。

女性の専門職化

1)専門職の概要と調査方法

専門職の量的拡大についてみていく前に、「専門職」の定義について確認する。先行研究によると、もともと「専門職」はキリスト教における聖職者から派生し、17世紀の西欧社会で「聖職者、医師、弁護士」がprofessionとみなされたことに端を発しているが、研究者や文脈によって、その要件や、どの職業が要件を満たすかという判定は異なり、多義的な用語だと言える。

本稿は、様々な専門職に就く女性の量的変化を分析することを目的とするため、先行研究にならって、日本標準職業分類を基にした総務省統計局の国勢調査の職業分類「専門的・技術的職業」の値に着目する。直近の令和2年調査では、この「専門的・技術的職業」の定義について「高度の専門的水準において、科学的知識を応用した技術的な仕事に従事するもの及び医療・教育・法律・宗教・芸術・その他の専門的性質の仕事に従事するものが分類される。この仕事を遂行するには、通例、大学・研究機関などにおける高度の科学的訓練・その他専門的分野の訓練又はこれと同程度以上の実務的経験あるいは芸術上の創造的才能を必要とする」としている。

大分類は中分類、さらに小分類に分けられる。なお、国勢調査の調査票では「実際にしている主な仕事の内容」として尋ねている。例えば二つ以上の勤務先で異なる二つ以上の仕事に従事している場合は、報酬が多い職業が優先される。

国勢調査の分類は、日本標準職業分類の改定を反映して順次見直されており、例えば、1995年の「情報処理技術者」は、デジタル化の進展を受けて、2005年以降、「システムエンジニア」と「ソフトウェア作成者」に分割され、「システムエンジニア」は2010年以降、「システムコンサルタント・設計者」に改称された。

本稿は、中期的変化に着目するため、主に1995年と2020年で共通(もしくは改称)した小分類の職業の値を比較するが、2020年だけに設けられている職業についても、女性の新たな専門職への拡大とみて、数を確認する。2020年の「看護師(准看護師を含む)」と1995年の「看護婦、看護士」は定義が一致しないが、女性の「専門的・技術的職業」従事者の中では最大の職業であり、注目度が高いことから、便宜的に、並べて記載する。中間地点として2005年調査の値についても一部参照する。

2)国勢調査からみる中期的変化

まず1995年を見ると、女性就業者(約2,564万人)のうち、「専門的・技術的職業従事者」は約341万人で、女性就業者全体の13.3%を占めていた。男女を合わせた専門的・技術的職業従事者の総数に占める女性割合は41.9%だった。中分類では「保健医療従事者」が約156万人と最も多く、その中でも「看護婦、看護士」が約88万人に上った。また、中分類で次に多い「教員」は約65万人で、そのうち「小学校教員」が約27万人と最も多かった。

その後、2005年には、女性の「専門的・技術的職業従事者」は約403万人となり、1995年から約62万人増加し、男女計の専門的・技術的職業従事者に占める女性割合は47.1%に上昇した。中分類でみると、特に「保健医療従事者」は約195万人、「教員」は約68万人、「社会福祉専門職業従事者」は約56万人となった。小分類で見ると、「看護師」が約105万人、「保育士」が約41万人に達しており、医療・福祉分野を中心に女性専門職が拡大していたことが分かる。

さらに2020年調査では、「専門的・技術的職業従事者」の女性は約504万人となり、1995年から約163万人、2005年からも約101万人増加した。女性就業者全体(約2,615万人)に占める割合は19.3%となり、1995年の13.3%から大きく上昇している。男女計の専門的・技術的職業従事者に占める女性割合もほぼ半数の49.1%に達し、専門職における女性の存在感は大きく高まった。1995年から2020年までの増加率をみても、女性就業者の人数がわずか2%増にとどまるのに対し、「専門的・技術的職業従事者」の人数は48%増に上り、過去25年間で女性の専門職化が大幅に進んだことが分かる。

職業別に見ると、2020年でも最も多いのは「保健医療従事者」で約218万人である。1995年比では約62万人、2005年比でも約23万人増加している。ただし、専門的・技術的職業従事者全体に占める割合は低下しており、女性専門職の裾野が医療分野以外にも広がったことを示している。これに対し、「社会福祉専門職業従事者」は約97万人となり、1995年から約54万人、2005年からも約41万人増加した。特に「保育士」は約61万人と、1995年から約31万人、2005年から約20万人増えている。

また、「技術者」は2020年に約34万人となり、1995年から約19万人、2005年から約17万人増加した。2005年時点では女性技術者は約17万人にとどまっていたが、その後大きく増加している。さらに2020年には「システムコンサルタント・設計者」が約10万人、「ソフトウェア作成者」が約7万人と、1995年の分割前の職業「情報処理技術者」(約8万人)を大きく上回る規模になった。デジタル化の進展を背景に、IT分野が女性の新たな専門職領域として拡大していることが分かる。このほか、「経営・金融・保険専門職業従事者」も約4万人に達している。税理士や社会保険労務士など、高度な専門知識や資格を要する職業に就く女性も増えている。

改めて、専門的・技術的職業従事者全体を見渡すと、女性の就業者数が増えたとともに、男女計に占める女性割合も上昇し、専門職における女性の存在感は着実に高まったと言える。さらに中身を見ると、保健医療従事者は依然として最大の職業群であるが、その構成比は低下している一方で、社会福祉専門職業従事者やIT関連技術者が大幅に増加しており、女性専門職の裾野が広がったことがうかがえる。