“複合的”な少子化対策を

本稿では、東京都では第1子有配偶出生率が高い一方、第2子以降への移行が弱いこと、また三大都市圏では中心部より周辺部の方が第2子/第1子比が高いことを確認した。これらは、第2子以降を考える局面で、住宅の広さや住み替え費用が制約になり得るという筆者の見方と整合する。一方で、住宅価格の影響は世帯の状況によって異なる。住宅価格の上昇は、賃貸の世帯には負担となる一方、持家世帯には資産効果として働く可能性もある。大都市で少子化対策として住まいを考える場合、賃貸住宅に住む子育て世帯への支援が重要だろう。

また、住宅価格の上昇が子育て世帯の居住地選択や出生行動に影響しているとすれば、都市部の住宅需要は単純な人口集中だけでなく、世帯形成・住み替え・広域転出の動きと合わせて見る必要がある。ファミリー向け賃貸住宅の増加や郊外住宅地の拡大、交通利便性の高い周辺県、子育て支援の厚い自治体の存在などは、中長期的な不動産需要や資産形成マーケットの展望を考えるうえでも見逃せない。

住宅価格は、第2子以降への移行を考えるうえで無視できない制約の一つではあるが、それだけで少子化を説明できるものではないことも本分析とオランダの研究から示唆される。冒頭に述べた通り少子化の要因を単一の事象に求めることはできず、それゆえ対策も難しい。複合的な対策を粘り強く続けていくしかないだろう。

【参考文献】
Van Wijk, D. & Feijten, P. (2025). Rising house prices, falling fertility? How rising house prices widen fertility differences between tenure groups. European Journal of Population, 41, 33. (https://doi.org/10.1007/s10680-025-09754-6)

(※情報提供、記事執筆:第一ライフ資産運用経済研究所 政策調査部 主席研究員 奥田 宏二)