大都市圏に共通する中心都府県の第1子出生率の高さ

ここでは二つの共通パターンが読み取れる。第一に、第1子は中心都府県で生まれやすい。三大都市圏すべてで中心都府県の第1子率が周辺県を上回り、首都圏では6.7ポイントの差がある。これは、20代の人口が中心都府県に流入し、結婚・第1子出産が行われる構造を反映している可能性がある。

第二に、第1子から第2子への移行は中心都府県で弱い。三大都市圏すべてで、中心都府県の第2子/第1子比は周辺県を下回る。首都圏の東京・周辺格差(0.13)は、関西圏(0.05)、中京圏(0.07)と比較して約2倍大きい。このパターンは、第2子以降を視野に入れた世帯が、より広い住宅を求めて中心都府県から周辺に転出するという行動と整合する。ただし、首都圏を一体として計算した第2子/第1子比(0.70)は、転出を考慮しても全国(0.78)を下回る。転出だけでは首都圏全体の第2子の少なさを完全には説明できず、核家族世帯率や共働き率の高さなど複合的な要因が残ることを示唆している。

住宅事情との関係

ここまで見てきたように、東京都では第1子出生の水準が高い一方、第2子以降への移行の弱さが見てとれる。その一因として、住宅価格の動向を確認してみる。国土交通省「不動産取引価格情報」を用いて東京都の中古マンション等取引を集計すると、全取引を70㎡換算した平均価格は2015年の約4916万円から2020年に5923万円に上昇した。住宅価格はコロナ禍以降に急上昇しており、2024年は約7425万円になった。有配偶出生率の分析は2020年までにとどまっており、近年の価格の上昇に伴って第2子以降の出生率に変化が生じたのかが論点の一つだが、少なくとも2015年・2020年の分析からは、第2子以降への移行の弱さが構造的に存在していたことが確認できる。

住宅価格上昇は出生にマイナスの影響のみをもたらすわけでもないという分析もある。オランダ全人口の登録データを用いたVan Wijk & Feijten(2025)は、住宅価格の上昇が持家世帯の出生を増やす一方、賃貸の世帯では出生を減らす方向に作用したと分析している。特に、持家取得から3年以上経過した世帯では資産効果が表れやすい一方、取得したばかりの世帯や賃貸の世帯では住宅コスト増による抑制効果が強かった。なおこの分析では、住宅価格上昇の影響は第1子でより明確である一方、第2子以降への影響は一様ではない。第2子への影響は小さいか、ほぼない一方、第3子以上については負の影響を示す証拠もあるとされている。オランダと日本の国情の違いを考慮すれば、この研究は日本にそのまま適用できるわけではないものの、示唆的である。

少子化に与える影響として捉えると、既存住宅を保有している世帯には資産効果があり得る一方、これから住宅を取得しようとする世帯には負担効果があることを意味する。全体としてどちらが優勢かは、持家比率や住宅取得のタイミングによって異なると考えられる。

総務省の住宅・土地統計調査(2023年)によると、東京都では持ち家住宅率が約45%にとどまり、賃貸世帯の比率が高い。このため、住宅価格の上昇は資産効果よりも負担効果として作用しやすいと言える。また、第2子以降を視野に入れた世帯が周辺県へ転出するという行動そのものも、住宅事情が出産の意思決定に関わっている可能性を示唆している。