日本銀行の内田真一副総裁は16日、今後の利上げペースについては今後の経済・物価情勢次第とし、当面は中東情勢が金融・為替市場や国内経済・物価に及ぼす影響を注視する必要があるとの見解を示した。

内田副総裁は利上げを決めた金融政策決定会合後の記者会見で、今後も利上げで緩和度合いを調整していくとし、調整ペースは「今の段階では今後の経済・物価情勢次第ということになる」と説明。その上で、「当面は中東情勢が金融為替市場や国内経済・物価に及ぼす影響を注視する必要がある」とした。

内田真一日銀副総裁

基調的な物価上昇率が2%に近づいている中で、物価については「上振れリスクも含めて判断していくことが重要な要素の一つになっている」と指摘。基調的物価は「2%程度の水準で安定させていくという観点が重要になる」と述べた。

今会合での利上げを織り込んでいた市場は、日銀の政策対応が遅れているとして先行きの政策運営に関する発言に注目していた。内田氏は追加利上げの具体的なタイミングやペースについて明言を避けたものの、市場関係者は早くも年内追加利上げの可能性を指摘している。

野村証券の岩下真理エグゼクティブ金利ストラテジトは、内田氏の会見を受け、政策判断の軸足が景気下振れから物価上振れリスクに移ったと指摘。「年内の利上げを否定したものではない」とし、通常のペースであれば半年に1回で次は12月と予想。夏場の物価が日銀の想定より上振れた場合は10月利上げの可能性も出てくるとの見方を示した。

内田氏は、政策金利が景気を過熱も抑制もしない中立水準にいつ達するかは、利上げしていく中で判断していくと言明。政策対応が遅れる「ビハインド・ザ・カーブに陥ることがないよう適切に運営していきたい」と語った。

植田和男総裁が入院のため初の不在となった今会合では、政策金利を31年ぶり水準の1.0%程度に引き上げることを賛成7・反対1で決めた。声明では原油高による価格上昇の影響で、基調的物価が2%目標を超えて上振れるリスクを指摘。今後も緩和的環境は維持されるとし、今後も利上げで緩和度合いを調整する方針を堅持した。

楽天証券経済研究所の愛宕伸康チーフエコノミストは、基調物価が2%を上回るリスクに言及したことを「日銀が腹をくくり強いメッセージを発した」とみる。日銀がビハインド・ザ・カーブに陥るリスクを認めたとし、「今回の明確なシグナルを受けて、利上げ予想を10月に前倒しした」と語った。

内田氏の発言に対する市場の反応は限定的で、円の対ドル相場は160円台前半でもみ合う展開が続いた。

為替相場については日銀のターゲットではないとしつつも、過去に比べると為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっていると指摘。「金融・為替市場の動向、その物価への影響は今後もしっかり見ながら政策をやっていくということに尽きる」とした。

今会合では、国債の買い入れ計画についても議論。2027年3月までは毎四半期2000億円程度ずつ減額するとした現行計画のペースの維持を決定した。同年1-3月の月間買い入れ額は2.1兆円程度となる予定。同年4月以降は月間2兆円程度の買い入れを行うとし、事実上の減額停止を決めた。

内田氏は、減額停止について「状況が変われば、政策委員会で予見可能性にも配慮した上で変えていくということはあり得る」と説明。減額を停止した国債買い入れについては「既に買ったものの後始末の話だ」とし、利上げとは矛盾しないとの認識を示した。

(発言の詳細を追加して更新しました。更新前の記事は第2段落の内田氏の肩書きを訂正済みです)

--取材協力:氏兼敬子、横山恵利香.

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