(ブルームバーグ):中国で職場への人工知能(AI)導入が急速に進む中、国営紙が労働者の権利保護を異例なほど踏み込んで訴えた。中国政府はAIがもたらすリスクをどう抑えるか検討している。
中国の労働組合組織の機関紙である工人日報は11日掲載の社説で、従業員の権利に新たな脅威が生じる中、政府機関に積極的な対応を求めた。労働基準の改善やAIアルゴリズムへの監督強化を規制当局に促し、労組や労働者代表により大きな発言権を与えるべきだとした。
「AIの波が押し寄せる中、労働者の権利を守る『堤防』をどう築くか?」と題する社説は「技術進歩の恩恵は社会全体で共有されるべきであり、少数の雇用主が労働者の権利を損なう手段となってはならない」と指摘した。
AI技術の普及は、中国では特に大きな課題となっている。雇用が政治的に敏感な問題であり、最高指導部が社会安定の維持を重視しているためだ。米国などでは、AIが大規模な失職を引き起こしている証拠が既に積み上がっている。

AIが職場に広がる中、中国は労働市場の慢性的な弱さにも対応を迫られている。家計の信頼感回復を目指す中国政府にとって、大きな障害となっている。米銀シティグループは、中国で「広範だがまだ浅い」AI導入が最終的に7000万人の労働者を置き換える恐れがあると試算している。
世界最大の労働力への圧力は、中国経済が不動産依存からテクノロジー主導の成長モデルへ移行する中でも強まる。ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の最近の分析によると、中国がハイテク分野やグリーン分野に軸足を移すことで、2030年までに数千万人分の雇用が創出される見通しだ。ただ、技能のミスマッチにより、多くの労働者が取り残されるリスクもある。
BEのデービッド・チー氏とチャン・シュウ氏は、「中国のハイテク分野は成長をけん引する役割を強めているが、製造業、建設、金融での雇用減を補うだけの雇用は生み出していない。その結果、特に若年層で雇用圧力が高まり、『柔軟な就業』形態で働く人が急増し、労働市場のより深刻な弱さを覆い隠している」と指摘した。
AIによる混乱が迫る中、工人日報はいわゆる「AIの波」の中での労働者保護に関する一連のリポートを掲載している。同紙は、中国共産党が中華人民共和国を建国した1949年に創刊された。「中国の労働者階級の声」となるために設立され、今も中国の主要国営メディアの一つだ。
同紙はAIに起因するとされる失職に加え、ホワイトカラーの技能を「吸い上げる」ことによる個人の権利侵害など、従業員が直面する他の問題も挙げた。
宅配員や配車サービスの運転手などブルーカラー職についても、プラットフォームが用いるアルゴリズムでは、注文の割り当てや単価設定の仕組みに関する透明性が不十分と指摘。所得分配の不平等を悪化させているとした。
同紙は、人間の労働力の削減だけを目的とするAI導入には慎重であるべきだと主張。こうした判断は「完全に市場に委ねるべきではない」とし、政府当局が重要な役割を果たす必要があるとした。
中国政府は、AI導入に伴う人員削減を控えるよう、特にテクノロジー企業などの雇用主に要請し始めたと報じられている。北京と杭州の裁判所はこうした紛争で労働者寄りの判断を示し、企業が雇用を打ち切る前に、労働者に再教育を実施するか配置転換を行う法的義務があるとした。
中国の人力資源・社会保障省は今年初め、AIが雇用に及ぼす影響に対応する措置を打ち出す方針を示していた。
原題:AI Sparks Alarm in China With Call to Protect Worker Rights (1)(抜粋)
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