S&P500種株価指数の予想変動率を示すシカゴ・オプション取引所(Cboe)のボラティリティー指数(VIX)が18と、比較的低い水準だからといって安心はできない。米株式市場では、強気相場では通常見られないような大きな値動きが続いている。

S&P500種はここ数週間、安定しているように見える。個別銘柄は大きく動いていても、上昇銘柄と下落銘柄が互いに打ち消し合うためだ。しかし、セクター別では状況は異なり、資金が業種間を目まぐるしく移動している。

2026年に入って以降、S&P500種の業種別指数で週間の上昇率トップと下落率トップの差が10%以上に達したケースが8回あった。セブンズ・リポートがまとめたデータによると、1年のこの時期までに同様の事例が見られたのは今世紀では2000年、2001年、2009年の3回だけで、いずれも市場にとって厳しい局面だった。

セブンズ・リポート・テクニカルズのタイラー・リッチー氏は、「セクター間の週間パフォーマンス格差がこれほど大きく広がる状況は、市場の警戒シグナルとして捉えるべきだ」と指摘する。過去の事例はいずれも「市場全体のボラティリティーが高まり、相場が長期的な天井を形成し始める局面と重なっている」と述べた。

S&P500種は表面上の落ち着きとは裏腹に、水面下での値動きの荒さが警戒感を呼んでおり、BTIGとセブンズ・リポートは健全な資金循環というよりも、市場が調整局面を迎える前兆との見方を強めている。

BTIGのチーフ・マーケット・テクニシャン、ジョナサン・クリンスキー氏は「ローテーションとは、ある銘柄群を売って別の銘柄群を買うだけのファンダメンタルズ上の理由がある状態だと考えている。それに対し、足元の動きはポジションの巻き戻しだ」と電話取材で指摘。ここ数週間の相場の動きについて、「ローテーションというよりも、ポジションの巻き戻しの色彩が強い」と述べた。

米株式市場では今年、S&P500種が上昇または下落する一方で、裾野の広がりを示す指標(値上がり銘柄数と値下がり銘柄数のバランス)は逆方向の動きとなる日数が過去最多となる勢いだと、BTIGのクリンスキー氏は先週のリポートで分析した。

S&P500の週間騰落率で今年最も好調なセクターと最も低調なセクターの差が10%以上に達した8回のうち、4回は5月下旬以降に集中している。この間、S&P500種自体は方向感に欠ける展開が続いている。投資家はイラン戦争を巡る相反する報道や、AI相場の先行き、四半期決算の内容を見極めていた。

セクター間の値動き格差は今後数日間に再び広がる可能性がある。29日にはウォーシュ米連邦準備制度理事会(FRB)議長下で2回目となる連邦公開市場委員会(FOMC)の政策決定を控える。このほか、週内に4-6月期決算発表のピークを迎え、マイクロソフトやメタ・プラットフォームズ、アップルといった大型ハイテク企業が29日から30日にかけて決算を発表する。

実際、米国株の今後30日間の銘柄間のばらつき(ディスパージョン)を示すCboeグローバル・マーケッツの指標は7月上旬に過去最高を更新した。トランプ米大統領が世界的な大規模関税措置を打ち出して市場が混乱した2025年4月に付けた従来の最高水準を上回った。

セブンズ・リポートのリッチー氏はこうした相場の乱高下について、「過去3年半にわたって株高を支えてきた相場の前提に、市場が疑問を抱き始めていることの表れだ」と論じた。

もっとも、ウォール街では足元の相場を依然としてローテーションと捉える向きもある。JPモルガン・チェースのトレーディング部門は、マクロ環境が一段と追い風になるとの見方を背景に、モメンタム株への強気姿勢を推奨。足元の株価下落については、「リスク資産の圧縮というよりも、ローテーションによるものとみられる」と分析した。

一方、BTIGのクリンスキー氏は、株式市場全体が過去最高値圏で推移する中、個別銘柄間の相関が過去最低水準近くまで低下している状況に懸念を示す。今後3カ月間の個別銘柄間の予想相関を示す指標は、今月初めに0.08と過去最低を記録した。

同氏は「相関がこれほど低い水準まで下がれば、あとは上昇するしかない」とし、「今回は株価が幅広く下落することで相関が高まることを懸念している」と語った。

原題:Crisis-Level Swings Become New Normal in 2026 Stock Market(抜粋)

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