中東情勢の混乱で原油・原材料高が続く中、コストの上昇により企業収益が圧迫され、賃上げの勢いが鈍る可能性がある。高市早苗政権が掲げる物価高を上回る賃上げの実現に逆風となりかねない。

日本化学エネルギー産業労働組合連合会(JEC連合)が2-5日に実施した調査によると、資源価格高騰など中東情勢の影響を「強く感じる」または「やや感じる」と回答した組合の割合は84%だった。今回の状況が今後の交渉に「大きく影響がある」または「ある程度影響がある」との回答も8割を超えた。

国内雇用の約7割を占める中小企業の賃上げ動向は、社会全体の持続的な賃金上昇を定着させる上で鍵を握る。人手不足を背景に人材の流出防止などの観点から、業績の改善が見られなくても賃金を上げる「防衛的賃上げ」を迫られた企業も多い中、中東混乱によるコストの高止まりが中小企業経営の新たな重荷となる恐れがある。

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JEC連合の堀谷俊志会長は、中小企業も千差万別だが、経営体力がないところは「この数年の賃上げは多分相当効いている。経営に影響を与えていると思う」と指摘。来年同じ規模での賃上げをと言われても、「もう無理というところもやはり出てくる可能性はある」と語った。

中小企業は、円安による輸入原材料価格の上昇で収益の確保にも苦慮してきた。輸出企業が円安の恩恵を受ける一方、国内向け企業では原材料やエネルギーの調達コスト増加が利益を圧迫している。足元の円安基調も輸入物価の上昇につながり、調達コストを押し上げる要因となる。

企業間で取引するモノの価格を示す企業物価指数(PPI)の上昇が鮮明となっている。5月は前年同月比6.3%上昇と、2023年3月(7.4%上昇)以来の高い伸びだった。輸入物価指数の前年比は円ベースで25.5%上昇と、22年10月以来の伸びとなっている。

JEC連合は石油や化学、セメント、医薬化粧品などの組合で構成され、大手から中小と幅広い規模の組合を抱える。同調査では、今年の春闘交渉における企業側の姿勢について、7割余りが「特に変化なし」と回答。全体としては、中東混乱でも企業の賃上げ姿勢がおおむね維持されていることが示された。

規模間格差

日本商工会議所が8日発表した全国の中小企業を対象とした調査では、正社員の賃上げ率は4月時点で平均4.29%と、前年同時期の4.03%を上回った。ただ、従業員20人以下の小規模企業では、3.52%と前年をわずかながらも下回り、企業規模間での差が浮き彫りとなっている。

同調査によると、防衛的賃上げを実施または実施予定との回答は約6割に上った。一方、賃上げを見送るとした企業は全体が5.7%、小規模企業は8.9%だった。見送りの理由は「売り上げの低迷」が最も多く、「資金面での余力が乏しい」や、中東情勢の影響を含む「コスト負担増や先行き不透明感」を指摘する声が続いた。

大手企業の下請け業務が多い中小企業では、物価高に伴うコスト増分の価格転嫁が課題となっている。

同会議所が4月に実施した調査では、原材料などコスト増加分の4割以上を転嫁できた中小企業は約半数にとどまった。「仕入価格の変動が激しく、価格協議後に仕入価格が上昇し、価格転嫁が追い付かない」との声もあった。一方、JEC連合の調査では、全体の7割余りが「十分にできている」または「一部できている」と回答した。

大和総研の神田慶司シニアエコノミストは、中小企業では価格転嫁を巡り「二極化している」と指摘。ある程度商品力やサービスの質が高くてコスト増を転嫁できている企業であれば今後も価格転嫁が進むが、そうでなければ「転嫁ができず、コスト増に耐えられなくなり、事業を継続できなくなるという可能性もある」と述べた。

(10段落目以降に背景情報を追加して更新しました)

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