対応策を考える

イラン攻撃のような出来事が起こる度に、観光需要はつくづく平和の配当なのだと感じてしまう。2020年のコロナではまさしく観光需要が干上がった。コロナ前は、3~4兆円だったインバウンド需要も、最近では9兆円台と2~3倍へと市場規模が膨らんでいる。最近、関西に仕事で出向くと、東京以上に訪日外国人を街中で目にする。増えすぎた外国人を嫌う人も多いが、経済的にはその外国人が観光業をはじめ、日本のサービス業を潤しているのは事実だ。東京都、大阪府、京都府の3地域だけで9兆円の需要の3分の2が集中していて、主要都市のいくつかでは猛烈なホテルの建設ラッシュが起きている。高市政権はあまり重視していないが、筆者は観光業は明らかに成長分野であるとみる。訪日外国人振興に消極的な人は、よくオーバーツーリズムと言うが、訪日外国人が3地域に過度に集中する様子は、むしろ「偏在ツーリズム」と言った方がよい。全体数を減らすのではなく、3都市に集中した観光客を全国に分散するという考え方が正解だとみている。

そして、最近の原油高騰のような外的ショックに対しては、さらに観光需要の頑健性を高める方策を考えていくことも重要だろう。

そこで、筆者は2つの対策があると考えているので紹介したい。1つは、燃油サーチャージの負担が相対的に小さい地域、近隣アジアからの訪日客を増やすことを狙うのである。2025年の訪日客数の内訳では、全体4,268万人のうち、韓国946万人、台湾676万人、香港252万人、タイ123万人を併せて、46.8%に達する(日本政府観光局)。2025年11月以降、中国からの訪日客の減少をこれらの地域からの増加が穴埋めした。日韓関係は、以前よりも良好になっていて、平和の配当として訪日客も増えている。その流れをさらに加速していくことが重要になる。

もう1つは、欧米・オセアニア地域向けの観光は、非価格競争力を高めることである。米国、欧州、オーストラリアの3地域からの訪日客数は、2025年度753万人(シェア17.6%)と多い。その訪日客の内訳では、初めて日本を訪問する以外に、2回3回と来てくれるリピーターが増えている。彼らは、旅行費用が多少高騰しても、日本旅行の魅力を重視して旅行回数を増やしてくれる大切なファンである。その中には、買い物や主要観光地巡りよりも、日本文化を体験し、長期滞在を楽しんでくれる方々が増えている。コト消費の愛好者たちである。

そうした日本観光の質的な追求は、非価格競争力を増して、「日本でなければいけない」という選好を高めることになる。いずれは、日本は円安に頼った産業振興を卒業していく必要があるので、やはり観光産業においても非価格競争力へのシフトが重要になる。

(※情報提供、記事執筆:第一ライフ資産運用経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト 熊野 英生)