ホルムズ海峡の事実上の封鎖が続く中、今後のガス価格を占う上でトレーダーは2つの変動要素に注目している。それは猛暑と中国だ。

予報では今年の夏、アジア全域で平年を上回る気温が見込まれている。エルニーニョ現象によって、暑さはさらに厳しくなる可能性もある。

エアコンの利用が増えれば、エネルギー価格がすでに高止まりする中で、電力需給はさらに逼迫(ひっぱく)することになる。最大のリスクは、猛暑が液化天然ガス(LNG)の買い手として世界最大の中国の需要を一段と押し上げることだ。

イラン戦争により世界のLNG供給の5分の1が滞っているが、過去のエネルギー危機で見られたような極端な価格急騰には至っていない。その主な理由は、中国の輸入が3月と4月に低迷したことだ。しかし、輸入回復の兆しは見えており、欧州が冬を前に在庫補充を必要とする時期とも重なって、世界的な調達競争が激化する可能性が高まっている。

「ホルムズ海峡封鎖の影響はまだ完全には表れていない。需要が少ない時期だったためだ」とMSTマーキーのエネルギーアナリスト、ソール・カボニック氏は述べた。「ほぼ封鎖された状態が続けば、LNG価格は8月にかけてさらに50%上昇する可能性がある」とした。

LNGの供給はすでに、アジアへとシフトし始めている。アジアの買い手がより高値を提示しているためだ。これまでは、ロシア産パイプラインからの供給を失ったことで、世界のLNG供給の大部分は欧州へと流れていたが、流れは一変している。

船舶追跡データの30日移動平均によると、欧州向けLNG供給は前年から10%以上減少。過去2週間には、欧州に向かっていた米国産の複数の積み荷がアジアへ行き先を変えた。

日本でも厳しい猛暑予想、LNG追加輸入も

太平洋赤道域の海面水温を上昇させるエルニーニョ現象は6-8月に発生し、その後数カ月で強まると気象専門家は予想している。これにより一段の暑さとなる可能性があるが、その程度については大きな不確実性がある。

エルニーニョは通常、世界の平均気温を押し上げる現象とされるが、それがどこでいつ起きるかは、現象の局面や他の大気パターンの重なりに左右される。

夏季には、エルニーニョは通常、インドや東南アジアの島しょ部で降雨を抑える一方、秋から冬にかけて中国の中部や南部に湿潤な気候をもたらす。これに対し、中国北部では深刻な干ばつや猛暑の確率を高める可能性がある。

現時点の予報では、東アジアの夏の気温は平年を上回る見通しだ。アトモスフェリックG2のジェームズ・キャロン氏によると、日本の平均気温は平年を約1.5度上回り、韓国と中国の大半では平年を0.5-1度上回る見込みだ。

世界第2位のLNG輸入大国である日本では、国内予報によれば厳しい猛暑が予想されており、発電向けに追加輸入が必要となる可能性がある。日本のスポット電力価格は過去数カ月で上昇し、2022年以来の高水準に近づいている。一部のトレーダーは、日本によるLNG購入は過去のエルニーニョの年にも増加しており、これが中国以上に市場を動かす可能性があるとみている。

中国では水力発電量がカギ

中国でも、暑い夏が予想されている。欧州中期予報センター(ECMWF)の見通しによると、6-8月には中国の南部・南西部で、気温が過去の記録の上位20%に入る可能性が高い。

重要な要因の1つは、中国が今夏に十分な水力発電量を確保できるかどうかだ。確保できればガス需要は抑えられる。キャロン氏によると、中国南部と東部は平年並みから平年より湿潤な状況が予想され、水力発電を支える一方、北部では一部で乾燥が生じる可能性がある。

中国のLNG輸入は、戦争開始後の数カ月は落ち込んでいたが、回復を見せている。電力・ガス会社が在庫を積み増し始めるとともに、カタール産供給の代替調達を進めているためだ。中国の輸入量は、3月下旬時点では前年比で30%減だった。ただ、その後は増加基調にあり、現在は前年比で10%減の水準まで戻している。

「中国の需要は季節性に従い、今後数カ月で増加する可能性が高い」と、シティグループのエネルギー調査ストラテジスト、マギー・シュエティン・リン氏は述べた。ただ、「不動産部門の低迷により産業需要はかなり弱い」ほか、現時点で「中国政府は米国産LNG輸入への関税を維持している」とも指摘した。

欧州でもガス市場は逼迫

一方、欧州は気温上昇を迎える中で、エネルギー面で不利な状況にある。スイスの水力発電は低水準で、河川水位も低下しており、原子力発電所の稼働にも影響する可能性がある。最近はアジアがLNG市場で欧州を上回る価格を提示しているが、欧州でも需要が高まれば、価格の急上昇につながる可能性がある。

「欧州のガス市場は逼迫している」と、エクイノールのガス・電力担当シニアバイスプレジデント、ヘレ・オスタゴー・クリスチャンセン氏は指摘する。「実際に供給できるガスが単純に不足しており、来冬に向けて必要な水準までガス貯蔵を積み上げるのは難しい。この紛争が続く日ごとに、状況はますます深刻になる」と語った。

原題:A Searing Asian Summer Will Add to Risk of Surging Gas Prices(抜粋)

--取材協力:Elena Mazneva、Ruth Liao、Kathy Chen.

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